緊張を克服する方法。『〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る』レビュー
“これから大事な打ち合わせ・プレゼンテーションがあるのですが、緊張して仕方ありません。克服する方法はありますか?”
こういった疑問に答えます。
結論は、はい、あります。
しかも、即効性があり、本番前の数分だけ実践すれば効果が出てくる素晴らしい方法です。
それは、ハーバードビジネススクールで社会心理学を専門とする教授が提唱するもので、全世界で多くの人たちに実践されています。
詳しく説明されている本がありますので、その内容を紹介します。
この著者の研究結果によれば、「ボディーランゲージが人を作る」ということです。
そのボディーランゲージを活用することで、緊張を克服することができます。
さらに、緊張の克服だけでなく、内面から自信があふれ、実際になりたい自分に近づくことができるようになるともいいます。
その気になる内容を見ていきましょう。
緊張を克服する方法。『〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る』レビュー
本『〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る』の要約まとめを紹介します。
「プレゼンスとは」
大事な会議や交渉があった後、「ああ、あの時にこう言っておけばよかった。もっと自分の考えを伝えておけばよかった。」と考えてしまうことはないだろうか?
そんな時、自分らしく、自分が大切にする信念に自信を持って向かって欲しい。
そういった心もちや態度のことを、プレゼンス(Presence)と呼んでいる。
プレゼンスが大事になるのは、緊張を乗り越えるためだけではない。
たとえば起業家が投資家に出資をあおぐ場面において、その起業家が「本当にそのビジネスアイディアの価値を心の底から信じているかどうか」は、投資家から見るとすぐに分かるという。
出資を獲得することばかりが目的になっているようなケースでは、その熱意が信用に値しないものとして見破られてしまうのだ。
その起業家がプレゼンスな状態であるか、つまりは本物の情熱を表現できているかどうかが大事になるということだ。
そしてその情熱は、内からみなぎるパワーを感じる時、自信とともに現れる。
それは特別なものではなく、誰もが日常的にもっているもの。
自分自身に対してちょっとした気遣いをしてあげさえすれば、誰でも自分らしく、プレゼンスな状態になれる。
キーとなるのは、他人の目を気にするのではなく、自分自身を気にしてあげること。
本物の自信とは、自分で自分を大切にし、成長し続ける意欲をもったときに生まれてくる。
自分で自分のことを信じることができてはじめて、他人の目に映る自分も信用に値するようになるのだ。
「自分を信じるということ」
自分を信じるために、アファメーションというテクニックが効果的だ。
アファメーションとは、「確認する」という意味。
巷では「自分はデキる。自分はかしこい。自分は最高だ。」と自分に言い聞かせるようなテクニックとして紹介されていることが見受けられるが、私が勧めたいアファメーションとは少し違う。
私が勧めたいアファメーションとは、「自分にとって一番大事なことを確認する」プロセスである。
自分が心の底から信じることを確認し、それを自分自身に言い聞かせてあげることだ。
数ある研究の中で、このアファメーションをした被験者としなかった被験者を比較したものがある。
両者に精神的なストレスを加えたとき、前者のアファメーションをした被験者においては、後者のアファメーションをしなかった被験者に比べて、圧倒的にストレス耐性に強いことが分かっている。
これは、自分自身の拠りどころとなる信念が明確になっていれば、ストレスに打たれ強くなるということだ。
とくにこれから大きなチャレンジに向き合おうとしている時、自分が心の底から大切にしているものが何か、自分の中で確認をしよう。
そうすれば、プレゼンスな状態になり、プレッシャーや心配、緊張なんてものは感じなくなるのだ。
「耳をかたむけよう」
新しく人と会う時、私たち人間が無意識に考えることがある。
「この人を信じても良いか?」そして、「この人は尊敬に値するか?」だ。
特に、前者の「信用」が最も大事であり、ここをクリアできない限り、どんなに尊敬できそうな実績やスキルを持っていたとしても、私たちが心を開くことはない。
まずはやはり、「信じて大丈夫。安心して良い。」ということが確認できることを求めてしまう。
どうしたら信用できるのか?
これもやはり、その相手で自分らしく、自分自身を大切にし、自分を信じている、プレゼンスな状態であるかどうかが肝となる。
人は自分に自信が無いとき、自分の考えを守ろうとするために無意識に早口になったり、相手の言葉に耳をかたむけずにしゃべり続けたりするものだ。
自分のことばかりしゃべるのをやめよう。
代わりに、相手の言葉に耳をかたむけよう。
相手の言葉に集中しよう。
自分に自信があれば、できるはずだ。
そしてその姿勢が、相手にも伝わり、相手からの信頼を得ることにつながる。
「自分なんて、という危険な考え方」
「みんなが自分より賢く見える。自分はたまたまこの場にいるけれど、運が良かっただけ。」こんなことを考えたことがあるのはあなただけではない。
そしてこういったケースの多くは、「あるべき姿」ばかりを追い求め、いつまで経ってもそこに追いつかない自分に不満を抱え続けている。
自分のことは、全然見ていない。
「パワーを感じない時はネガティブになり、パワーを感じる時にはポジティブになる」
人は身体の内からパワーを感じる時、自由に、自分らしく、恐れなく、そして安全に感じる。
結果として、チャレンジに対して前向きになり、それを成長の機会と捉えるようになる。
逆にパワーが無いと感じた時、変化を恐れと感じ、ネガティブで、他人の目ばかりを気にするようになる。
パワーを語る時、そこには2つのタイプがある。
一つは社会的なもので、他人と比べて自分が優位に立てているかどうか、というもの。
もう一つは、自分自身に対するパワーで、自分の生き方を自分の手でコントロールしている実感がある状態。
私たちに必要なのは、後者の自分自身に対するパワー。
自分自身にパワーを感じると、自分の信念に正面から向き合い、挑戦に前向きになることができる。
気をつけないといけないことは、そのパワーは特別なことをしなくても、無意識のレベルでスイッチが入るということ。
スイッチが入ると、私たちの考え方やマインドセット、果ては行動にまで大きく影響を及ぼしてくる。
さらに、パワーが減るとネガティブになるだけでなく、ネガティブになるとパワーも合わせて減ることが分かっていて、気づかぬうちに悪循環のループに入り込むことが起こりうる。
その結果、自分に自信がなくなり、自分らしさを出せなくなり、プレゼンスな状態からは程遠くなる。
逆にパワーがある時、人はポジティブになり、批判やストレスにも打たれ強くなり、物理的な痛みにだって強くなることが分かっている。
そのパワーはさらに、人とのつながりを深め、思考や感情、そして行動をも前向きに変えてくれることも分かっている。
そして前向きに取り組むと、自己実現の可能性だって高まる。
「ボディーランゲージとパワーの関係性」
ニュージーランドのラグビー代表チームが試合前に「ハカ」と呼ばれるパフォーマンスを行うことで自分たちのパワーを高めることは、よく知られている。
ボディーランゲージとパワーの相関性が人間や動物の生活のそこかしこに見てとれる。
私たち人間は、パワーを感じる時に、両手両足を広げ、胸を開き、顔上げて身体全体を大きく伸び上がらせるポーズをとる。
逆にパワーを感じていない時、人の身体は小さく縮こまっているものだ。
「ボディーランゲージを変えることで、前向きな気持ちを手に入れよう!」
私たちは通常、「楽しくなるから歌う」ものと考えるが、「歌うことで楽しくなれる」ということもまた真実なのだ。
つまり、楽しそうなボディーランゲージをとっていると、本当に気分も楽しくなるし、また逆もまた真なり、だ。
それを証明する実験例は枚挙にいとまがなく、ペンを口にくわえて強制的に口角を上げていると楽しい気分になってくるし、ゆっくり呼吸をしていると気分もリラックスしてくるのである。
では、パワーが内から溢れ出ているかのように、身体を大きく伸ばし、パワーポーズをとるとどうなるか?
そう、自信がわいてきて、ストレスにも打たれ強くなることが分かったのだ!
パワーポーズをとるだけで、身体の内から前向きな自信が湧き出てくる!
気分や思考も前向きになるという実験結果も得ることができた。
これは誰に見せるものでもない。
洗面所などに一人でいるときに、大きく両手をあげたり、胸を張って腰に手を当てたりしよう。
そうすると、プレゼンスな状態になっていくことを感じるだろう。
また、もし物理的にパワーポーズをとることが難しければ、頭の中で想像するだけでも効果があることが分かっている。
このように、人間は行動を変えることで中身も変わることが分かっている。
しかし、その行動を変えることそのものが難しい。
なぜなら、習慣の力が働いているからだ。
だから、一度に思い切って変わろうとしないで、無理せず、少しずつ少しずつ変わるようにしよう。
Fake It Till You Become It !
本当にそうなるまで、なりきろう!
パワーポーズをやってみよう!
この本の中では、著者のもとに届いた御礼メッセージの数々が紹介されています。
アメリカに留学に来たけれど、外国人である自分に自信が持てないでいる人。
奥さんをガンで亡くし、自分も病気にかかってしまって落ち込んでいる人。
恋人と泥沼の関係を続けてきて、終止符を打てずに悩んでいる人。
身体に障害を持っていて自分に自信が無い人。
起業をしたいけれども踏み切れずに葛藤している人。
職場でセクシャルハラスメントを受けているのに声を上げることに勇気を出せないでいる人。
その人たちが、「このパワーポーズをとることによって、自分を取り戻し、現状を打開する勇気をもらうことができた!ありがとう!」というメッセージを手紙やE-mailで著者に送っているのです。
特別な人のためだけではなく、誰にでも使える、パワーを感じて実りある生活を送るための素晴らしいアイディアです。
ぼくはこの本を読んでから、大切なプレゼンテーションでも交渉でも、本番前に少しだけ時間をとってパワーポーズをとることにしています。
すると自分が「緊張」している状態を客観的にみられるようになりますし、なによりも自分自身、自分の信念そのものと向き合うことができるようになりました。
他人の誰でもなく、この自分自身こそが、自分を一番に大事にしてあげないといけない。
そんなことも学ばせてくれる良書です。
さあ、あなたも立ち上がって胸を張り、両手を腰に当てて、パワーポーズ!