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安倍首相による米国議会演説 勝手に評価します

今日は安倍首相による米国議会演説が有りましたね。

米国上下両議院合わせての場で演説することは日本人初めてのことであり、大注目でした。

開始時刻は米国東部時間の午前11時からであり、ぼくも仕事そっちのけでライブ映像に釘付けでした。

日本からアクセス出来るかは分かりませんが、アメリカでは以下のリンクから米国議会のライブ映像を無料でオンライン視聴することが出来ます。

日本国内ではNHKを通じて視聴することが出来たようなので、深夜だったとは思いますがご覧になった皆さんも多かったのではないでしょうか。

米国議会視聴リンク:http://houselive.gov/, https://www.govtrack.us/congress/live

さて、実際に安倍首相が議会に登場して演説を始めたのは午前11時10分頃で、そこから午前11時55分頃まで約45分間ほど続きました。

映像に映っている議員達の手元には安倍首相が読み上げているであろう原稿が有りましたし、演説終了直後にメディア各々から速報として演説内容が発表されたタイミングがあまりに早かったので(演説終了後5分後くらいから続々と!)、きっとメディア関係者も事前に原稿を入手していたことと察します。

つまり、今回の演説内容は、日米両政府関係者が一致協力し、両国国民並びに全世界へと発信すべき内容として、多大なる準備が費やされて作られたものなのでしょう。

今回は、そんな日米両政府合作の演説に対し、勝手に評価をさせてもらいます。

具体的な政策内容への賛否には触れず、「今回の演説を通じて世界に発信したいメッセージは何であったのか?」「アメリカは安倍首相のリーダーシップをどのように受け止めたか?」といった視点から考えます。

これから各国・各界から様々な意見が出て来ることと思いますが、その中の一意見として読んで頂ければ幸いです。

image by www.wsj.com

1.プレゼンテーション (話し方・見せ方) について

最初に技術的なことですが、練習に練習を繰り返して来たことを伺わせられるプレゼンテーションでありました。

何より、「アメリカ人に受ける」ような話し方、流れ、見せ方であったと思います。

当然、米政府側のチェックが入っていることは言うまでもありませんが、日本側にもこれだけ「アメリカ流プレゼン方法」に熟知している方が裏方にいた、ということでしょう。

例えば、口調はゆっくり、ハッキリ、それでいて強弱をつけながら、伝えたいことを明確に出来ていました。

強調したいポイントでは手振りをつけ、顔を上げて聴衆に目線を向け、訴えかけるように話すことが出来ていました。

また、時折ジョークを織り交ぜたり、日本版ファーストレディーである昭恵夫人に謝意を送る等、まさにアメリカン!

演説の最後に発した、「Alliance of Hope (希望の同盟)」という言葉を聞いた時は、「まさにオバマ大統領と同じだ!」と思いました。

2004年の民主党大会基調演説でオバマ上院議員(当時)の名前を世界中に轟かせた演説の名フレーズ、「The Audacity of Hope (大いなる希望)」と同じなんですね。

ここからも、この演説が日米両政府によって入念に作り上げられたものであることを理解しました。

尚、以下の写真がネットで出回り、「安倍首相は原稿棒読みで演説が下手であった」などという批判が出ていることを見かけますが、全くもって言語道断!

これだけの準備を重ねている上、母国語でない英語であそこまで「アメリカらしい」プレゼンが出来るのは、アメリカ英語の発音やプレゼン技術の分析、そしてその訓練など、よほどの努力を重ねて来た証拠です。

 

image by headlines.yahoo.co.jp

 

2.全体のトーン

「アメリカとの友好関係を強調、強調、そして強調」して終始しましたね。

まず、第二次世界大戦時に犠牲になったアメリカ人の若者に対する深い追悼の念を表し、その上で硫黄島での戦いに参加したアメリカ海兵隊のスノーデン中将と、日本軍の硫黄島守備隊司令官で硫黄島で戦死した栗林大将の孫の新藤前総務大臣が傍聴席にいることを紹介しました。

それを受けて両名が立ち上がって握手を交わし、日米両国の現在の友好関係を力強くアピール(写真、以下)。

加えて、アメリカの同盟国であるオーストラリア・インド・韓国との関係強化や、米軍グアム基地への金銭支援、そして対テロを中心とした軍事同盟の強化など、「あらゆる面でアメリカを支持する」と言及しました。

また、「アメリカ建国後の約240年の歴史の中で、大戦後の約70年間は、その4分の1にあたり、日本はアメリカにとって最も重要な同盟国の一つである」とも説明していました。

アメリカを下から見上げるのではなく、全うにアメリカを評価する姿を崩さず、それが上手く伝わったと思います。

image by www.abc.net.au

 

3.注目のTPP交渉とアジア隣国への第二次世界大戦時に関する謝罪表明について

今回は、安倍首相による演説が始まる前から、TPP交渉についてはどう言及するのか、第二次大戦時に迷惑をかけたアジア隣国への謝罪表明は有るのか、注目が集まっていましたね。

結果として、TPPについては、世界最大規模の友好的経済圏 (世界GDPの約40%見込み)を創出するよう日米で強いリーダーシップを取る重要性が有ることを強調し、そしてアジア隣国への謝罪については、明言することを避けました。

TPPに対しては、アメリカでも日本同様に、国内に根強い反対意見が有ります。

それはこれ以上に製造業などの仕事が低賃金国に輸出されてアメリカ国内で失業者が増えることを懸念するものです。

しかし、今後益々の発展が期待されるアジア経済圏に対し、アメリカがリーダーシップを発揮するのか、それともその機会を中国に取られるのか、という点でアメリカ政府は焦っています。

そういった中、安倍首相はアメリカ政府を支持する形で、TPPの推進を改めて表明したことになります。

このように中国をライバル国と想定しているアメリカにとって、自分たちの同盟国にいたっては、同盟国同士でも仲良くして欲しい、と考えるものです。

つまり、日本と韓国に仲良くして欲しいのです。韓国が従軍慰安婦問題を声高に叫んでいることは世界的に知られている為、それに対して日本が謝罪を表明するかどうか、という点が問題であるとアメリカ国内では考えられていました。

結果、韓国のみならず、アメリカやアジア諸国など、日本が大戦時に迷惑をかけた全ての国に対して安倍首相は遺憾の念を表明することとしましたので、こうすることで、アメリカとの和解はさんざんアピールしてる中、「未だに過去を引きずる韓国」というイメージを作ろうとしたのであろう、と、ぼくは理解しました。

 

韓国人による日本への抗議の様子 image by www.wsj.com

 

4.安倍首相のリーダーシップについてアメリカ人はどう受け止めたか?

45分間の演説の終始に渡って、米国議員から立ち上がって拍手を受ける場面が何度も何度も有りました。

それだけに、アメリカへの友好関係アピールが高く評価されていたのです。

中国という新ライバル国の台頭、テロとの戦いの長期化、国内の人種問題、アメリカの相対的パワーの低下など、年々自信を無くしてゆくアメリカ。

そんなアメリカにとって、日本が手放しでアメリカをサポートしてくれることは、とても嬉しく有り難いのです。

その中、私個人の勝手な印象ですが、以下の3点が一番多くの拍手をもらっていると感じました。

(1) 安倍首相が「日本は女性の社会的地位向上に努力する」と言及した時です。

英語では「Empower women」と言っていましたが、ここで会場から、「おおーっ!」というどよめきのようなものが湧き上がりました。

思うのですが、それだけ、「日本においては女性の地位が低い」と認識されていることを認識しました。

従軍慰安婦問題に絡めた発言であったのかもしれませんが、アメリカを含めた諸外国へのアピールなど関係なく、国内でしっかりと進めなければならない課題と考えます。

(2) 2点目は、昨今の日本政府による「積極的な平和外交・国際問題解決」をアピールしていた時のことです。

先日のISISによる後藤さん殺害のことは皆さん記憶に新しいと思いますが、「積極的な平和外交」はそのきっかけになったと言われる、よく分からないポリシー。

安倍首相は言いました。

「日本は国際法遵守のもと、積極的に、世界の平和実現と問題解決に努めます。戦うべきは、テロリズム、伝染病、そして気候変動。」

この、「テロリズム」という言葉が出た時はシーンとしていたのですが、「伝染病」という言葉が出て来て、会場に「あれ、続くのか?」という空気が流れ、「気候変動 (英語でClimate Change)」という言葉が出た時に、上記同様、「おおーっ!」というどよめきが湧き上がり、米国議員達が立ち上がって拍手喝采を送っていました。

なぜアメリカ人が今そこまで気候変動に敏感になっているかは分かりませんでしたが、少なくともそれがテロリズムとの戦いよりも彼ら彼女らにとってずっと重要であることが分かりました。

アメリカ人だって、戦争は嫌いなのです。

(3) 最後3点目は、安倍首相が3.11の震災時にアメリカが多くの支援を与えてくれたことに言及した時です。

Carole Kingの歌の歌詞を引用しながら、日本が一番落ち込んでいた時に、Hope (希望)をくれたのが、一番の友達であるアメリカであった、と。

それは、「アメリカの友人達よ、自信を無くして落ち込んでいる場合ではない。アメリカの役目とは、世界にHope (希望)を与えることではないか。日本人のように、それによって助かっている人々が数多くいることを忘れないでくれ。しっかり、力強く前を向いて歩いてくれ。」と、激励のようなメッセージを送っていたのです。

これに対して会場の雰囲気は、「安倍首相の言う通りだ」とも言わんばかりで、静かに、しかし長く長く続く拍手をいつまでも送っていたのでした。

このようにアメリカへの友好関係をしっかりアピールした後、退場の際には多くの米国議員達が安倍首相のもとに駆け寄り、握手を求めたり声をかけたりする姿が映像に映されていました。

 

5.おまけ

安倍首相をはじめ、この数ヶ月間奔走に回った関係者の皆さん、大変お疲れ様でした。

さて、また明日から新しい一日が始まります。

お隣さんの国々は既に批判のメッセージを発しています。

今後、我々の世界はどうなっていくのでしょうか。

今のやり方で、世界平和を実現することは出来るのでしょうか。

それは、政府だけでなく、私達ひとりひとりが考え行動しなければならないこと。

他人事ではなく、自分のこととして、意見を発し、議論を重ね、より良い方向を模索し続けていきましょう。

では!