「シンコ・デ・マヨ」という言葉を聞いたことがある人は多いかと思います。
Cinco de Mayo のことで、スペイン語で、5月5日という意味です。
この日には特別な意味があり、それは、メキシコが独立を勝ちとっていく過程において、侵略しようとメキシコ国内にやってきたフランス軍を打ち負かした日です。
300年にわたってスペインの植民地にされ、ようやくスペインからの独立を果たした後にも、アメリカに力づくで国土の半分を割譲されたメキシコ。
外国から好きなようにされてきたメキシコが、スペインやアメリカに続けと、さらに侵略目的でやってきたフランスを、自力で撃退したという、記念すべき日。
毎年5月5日には、世界中の多くのメキシカンレストランなどでお祭り騒ぎが繰り広げられ、それは楽しく賑やかなものであるのですが、背景にはそういう歴史があります。
メキシコ国内を旅行していると、「インデペンデンシア通り」や「レフォルマ通り」など、独立の歴史にちなんだ地名が多く目につきます。インデペンデンシアは、インデペンデンス、独立のこと。レフォルマは、リフォーム、改革といった意味。
他にも今回の旅では、独立を先導した立役者たちの名前である、「イダルゴ」「モレーロス」「フアレス」といった文字も、地名や駅名として、多くの場所で見ました。
実はこれ、メキシコだけでなく、他の中南米諸国でも見られること。日にちが通りの名前になっていることがあり、それが何かの記念日であったというケースです。そしてさらに見ていくと、メキシコ以外の国々が独立を勝ち取ったのも、同じようなタイミングです。
例えば、
- 1804年:ハイチ
- 1810年:コロンビア・チリ
- 1811年:パラグアイ・ベネズエラ
- 1816年:アルゼンチン
- 1821年:ペルー・メキシコ・コスタリカ
- 1822年:ブラジル
ちょうどこのころ、宗主国であったスペインの国力が低下していた時期で、タイミングを逸さぬ形で、我も我もと、各国が独立を勝ちとっていったのです。
すべての国々の歴史を同じくくりで語ることは雑すぎるものの、スペインの最大の植民地であったメキシコの歴史を見ることによって、他の中南米の国々の歴史への理解にもつなげられるものと思います。
ぼくなりに、読書やネットから学んだ、独立の歴史をざっくりまとめると、
- 1521年:スペインによる植民地化スタート。以降の300年間が植民地としての歴史。搾取を繰り返される。
- 1763年:宗主国のスペインが英仏7年戦争に参戦し、イギリスに敗北。スペインの国力低下が明らかに。
- 1776年:イギリス領アメリカが独立。「新大陸」がヨーロッパ旧大陸から独立を勝ち取った先例となる。
- 1789年:フランス革命。メキシコでも、独立の気運が高まる。
- 1808年:スペインがフランス・ナポレオン軍によって侵略される。宗主国そのものが危うくなっている。
- 1810年:メキシコで、イダルゴ神父の扇動により、独立戦争がはじまる。9月16日にはじまったため、その日は今でも独立記念日として祝われている。
- 1821年:宗主国スペインに寄り添う保守派と、独立をかかげる独立派との間の闘争が続き、ようやく1821年に独立軍がメキシコシティ入城。その後、軍部主導による政治が続くも、内政は安定せず。
- 1846年:アメリカによるテキサス併合。
- 1847年:米墨戦争。アメリカ軍がメキシコシティ入城。
- 1848年:グアダルーペ・イダルゴ条約により、アメリカがメキシコの国土の半分を割譲。独立は果たしたものの、内政が不安定であったため、アメリカにつけこまれてしまったわけです。
- 1862年:シンコデマヨ、5月5日にフランス軍の侵略を撃退。アメリカに続けと、フランスにも狙われたわけです。
- 1863年:結局、フランス軍によるメキシコシティ占拠を許す。その後、国内抗戦が続く。
- 1866年:フランス軍による、メキシコ撤退。
- 1910年:フランシス・マデロの先導により、ラテンアメリカ初の市民革命がはじまる。
- 1917年:憲法制定。その後も、暗殺やクーデターが繰り返されながらも、徐々に安定に向かって行く、
過去を振り返ると、メキシコといえども、元はといえば、マヤやアステカ、その他の民族を含め、多様な人種が棲みわけていたところ。
そこにスペインがやってきて、植民地化。どうにか独立を果たそうと、現地住民たちが苦労の果てに独立を勝ち取る。しかし、独立後には、軍部が独裁を続ける形になり、内政不安定の状態が続く。もともと多様な民族で成り立っている国なので、統治が大変。
そこにアメリカやフランスが侵略しに来た。アメリカにいたっては、米墨戦争の末に、メキシコ国土の半分を割譲していく始末。
1917年になり、ようやく市民革命が果たされる。その後も不安定な状況は続くが、少しずつ、政治の安定と、経済成長とを果たしていき、今に至る。
ずっと苦労が続いてきたメキシコ。それでも、明るさを忘れない国民性。
独立の歴史に思いをはせながら、町歩きをするのでした。
(参考文献)
- 「物語 メキシコ の 歴史」著:大垣貴志郎
- 「物語 ラテンアメリカ の 歴史」著:増田義郎
プロフィール
慶應→住友電工→アメリカ駐在(25歳)→ノースカロライナ大MBA(30歳)→エマソン米国本社幹部候補(32歳)→日本エマソンGM(35歳)→ユーピーエス社長(39歳)→経営アドバイザー兼コーチ(今) | 2児の父親|アメリカ在住10年|表千家茶道学習者