英語を話すには、コンテクスト (状況や関係) の理解が大事。「コメニコメニ」という言葉にピンと来ますか?
「ベル」「テレメ」「コメニコメニ」
これらの言葉を聞いてピンと来る人は、ぼくと世代が近い、30代・40代前後の方たちでしょう。しかも、東京を中心とした首都圏で学生時代や青春期を過ごしていたバックグラウンドがあるはずです。
50代以上の方や、逆に10代や20代の方では、ほとんどの方が「なんのこと?」というリアクションだと思います。
「ベル」:ポケベルのこと。
「テレメ」:ポケベルのサービスを提供していた「東京テレメッセージ」という会社のこと。
「コメニコメニ」:ポケベルにメッセージを送るには、家庭用固定電話や公衆電話から数字キーを入力する仕組みで、その冒頭に「*2*2」とつける必要があったこと。
ここで言いたいのは、同じ日本語を使う日本人同士でも、時代背景や個人としての体験を共有していないと、言葉は通じないということです。
ちなみに、『「ポケベル」とか「東京テレメッセージ」と言ってくれたら分かったのに』と感じる方もいらっしゃると思います。でも当時を振り返ると、ぼくたちが使っていた言葉は、「ベル」や「テレメ」です。「ベル」は「ベル」ですし、「テレメ」は「テレメ」なんです。「ポケベル」なんて言葉はまどろこしくて使っていませんでした。「使われている言葉」が「言葉」なのです。
さて、この「言葉」を通してコミュニケーションをする時、ぼくたちは「コンテクスト」を共有することで分かり合おうとしています。言い換えると、状況や関係、そして個人の体験や経験が共有できてはじめて、「ああ、あなたの言っていることが分かる」となるのです。「ポケベル」の例にあるように、同じ体験や経験をしていないと、相手の言っている言葉を理解することが難しいのです。
いわば、「言葉」に「コンテクスト」というメッセージを乗せて、相手の頭に届けているとぼくは考えます。
そしてこれは、英語を話す中でも同じことがいえるのです。
現代のコミュニケーションの道具として大活躍しているE-Mailやテキストやチャットというものがありますが、長ったらしく書いていると手間取るため、短縮文字や絵文字などが生み出され、発達してきました。
その中で、この文字を見たことはありますか?
「lol」
「イチ・ゼロ・イチ?」いや、違います。これは、「Lough Out Loud (声を大きくして笑う) 」の頭文字の略 (エル・オー・エル) で、「マジウケる、爆笑!」という意味の英語です。アメリカのケータイ・スマホ世代が使い始めた言葉で、辞書のMerriam-Websterにだって載っています。(http://www.merriam-webster.com/dictionary/LOL)
最近、フェイスブックなどのソーシャルネットワークがどんどんと広まっていって、これまではコンピューターもスマホも触らなかったような高齢者の人たちも使いはじめるケースが増えています。
そこでアメリカではこんなことが起こっています。
自分の子供や親戚の若い子たちが投稿するメッセージに、「LOL」「LOL」と、たくさん返信をくれるのです。
ジョークを書いているときには自然に見えるのですが、「今日は悲しいことがありました。。」とか「目指していた志望校に受かったよ!!」なんて投稿に対しても、「LOL (爆笑!)」「LOL (爆笑!)」と返してきてくれるのです。
「どうなってるんだ?」と不思議に思い、電話をしてみると、
「LOLの意味?ああ、知ってるよ、最近習ったんだ。」
「Lots Of Love でしょ?」
「Lots Of Love」=「愛を込めて (いつも見守っているよ) 」
とても心の温まる間違いです。
こうして、同じ体験や経験、そして状況や背後にある関係性を共有していないと、コミュニケーションが行き違いになってしまうことが、「言葉」の難しさです。
たまに、「シェイクスピアを原書で読もう」という声を聞くことがありますが、ぼくは読んだことがありません。きっと作品として素晴らしいのでしょうし、感性を磨く上でもこの上ない教材なのだと思います。ぼくの専門外ですが、劇や舞台を学ぶ材料の宝庫でもあるものと想像します。
しかし、ぼくがここで言いたいことは、「英会話学習のためにシェイクスピアを原書で読むことは効果的でない」ということ。むしろ、「現代映画やドラマを英語で楽しく観ながら勉強しよう!」という方が、よほど説得力があるのです。なぜなら、それらで使われる言葉の方こそ、今現在、使われている言葉に近いからです。何が流行っているかということも分かりますし、まさに現地でそういった状況に遭遇することは大いにありえます。それこそ、英語を話す中で、コンテクストを理解することをレバレッジできる時となるのです。ちなみに、シェイクスピアは400年前のイギリスに生きた人 (1582年-1616年)。日本でいうと、徳川幕府が開かれた頃ですね。
クラシック映画についても、ぼくは同じ考えをもっています。たとえば、カサブランカは素晴らしい作品でぼくも大好きですが、1943年に制作されたもの。名セリフ「Here’s looking at you, kid (邦訳:君の瞳に乾杯)」なんて使おうものなら、まさに、
「lol」
というわけです。