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ケースコンペティションに見る、ダイバーシティの活かし方

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よく、ビジネスにはダイバーシティが大切とか言いますが、上手に活かさないと大変なことになる、という失敗経験談です。

ビジネススクールでは、ケースコンペティションというものがよく開催されます。その仕組みはいたって単純で、スポンサー企業からビジネスの課題を提示され、その課題に対して一定期間内に学生側から解決策を提案する、というもの。その解決策案をスポンサー企業が吟味し、順位付けがされ、優勝グループが賞金等を手にするのです。期間は1日のこともあれば、数週間に渡って開催されることも有ります。ビジネス課題も、スポンサー企業の新商品のマーケティングを考えるものであったり、電気自動車を普及させる為の公的施策であったりと、様々です。

では一体なぜそのようなことをするのかというと、学生側には、賞金が手に入る、レジュメ(履歴書)に「XXケースコンペティションで優勝!」と書ける、スポンサー企業との面接優先権が手に入る、授業で習ったスキルを試すことが出来る、といったようなメリットが有るからです。逆にスポンサー企業側には、前例にとらわれない学生の斬新なアイディアを聞くことが出来る、企業の知名度を上げることが出来る、優秀な学生に目星をつけてリクルーティングをすることが出来る、といったメリットが有ります。
その中、入学後2ヶ月ほどのタイミングで、1年生にとって初めてのケースコンペティションが開催されました。アメリカを代表する多国籍企業がスポンサーであり、お題はその企業の次世代エネルギー戦略を考えよ、というもの。チームメンバーは最大4名、期限は2週間というルールでした。学校に企業側担当者が来て学生達のプレゼンテーションを聞き、トーナメント方式で優勝チームが決められるのです。・・

参加は強制ではありませんでしたが、学年の半分くらいの学生達がエントリーしていました。自分も、「いっちょやるぞ〜」と意気込んでエントリーをし、チームメンバー探しに取り掛かりました。すぐに頭に浮かんだことは、「ダイバーシティ(多様性)に富んだメンバー構成にすれば、色んなアイディアが生まれ、最高の提案が出来るかもしれない!そうだ、ダイバーシティだ!」と。そこで、アメリカ人・インド人・イスラエル人・日本人(自分)の合計4名でチームを結成。もうこれだけで、「すごいダイバーシティ!勝ちはもらったな、ナハハ」とニヤけていました。

しかし結果は大敗。本当にひどいものでした。というのも、メンバーに問題が有ったわけではなく、ダイバーシティの活かし方が全然分かっていなかったんです。それはそれはビックリ仰天するような新しい考えが次々に湧いて出て来るのですが、それらをまとめる共通の基準を持ち合わせていませんでした。時間配分のやり方や論理構築の進め方を含め、期限内にどのようにアイディアをまとめていくかという点で、皆んなが本当にバラバラの考え・やり方を持っていました。ひたすら喋るアメリカ人、喋り負けてはいけないと、もっと喋るインド人、それらをどうにかまとめようとする日本人である自分、まとまりかけたところで必ず新しい論点を持ち出すイスラエル人。

ずっとこの調子だったので、もうどうしたら良いか分からず、最後は、締め切り直前1時間前になってもまだ新しいアイディアを提案しようとするイスラエル人をあからさまに「無視」して突貫作業で資料をまとめ切り、提出に漕ぎ着けました。中身はボロボロ、雰囲気は最悪。提案内容にロジックなんて有りもしませんので、スポンサー企業担当者へのプレゼンテーションも、皆んなで恥ずかしい思いをしながらやったほどです。自分たちの出来具合は自分たちが一番よく分かっていますので、プレゼンテーション終了後には「また明日」と一言だけ交わし合い、皆とぼとぼとその場を後にしたのでした。

結局、トーナメントを勝ち抜いて優勝したのはアメリカ人4名で構成されたチーム。中には元コンサルタントもおり、決勝では斬新なアイディアと共に素晴らしいプレゼンテーションを披露していました。すごくプロフェッショナルで格好良くて、自分たちとの差にショックすら受けました。同じ学校の同級生なのに、この差は何なのか。。。

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自分はその後ケースコンペティションに挑戦することは有りませんでしたが、同志である日本人同級生達がその後も果敢にケースコンペティションに挑戦し続けました。しかも、チームメンバーは日本人だけで構成し、「世界にサムライ魂を見せてやる!」と鼻息を荒くしているんです。マーケティングをテーマにしたものやオペレーションをテーマにしたものなど、様々なものに挑戦していたのですが、回を重ねるごとに、上位トーナメントに進出して行きました。いよいよアメリカ人同級生を差し置いて校内で優勝を果たし大喜びをしたのも束の間、なんと2年次には世界中のビジネススクールが参加する世界最大のケースコンペティションで優勝まで果たしたのです。オンラインニュースに取り上げられるわ校内がお祭り騒ぎになるわ、同じ日本人として自分も鼻高々で自分ごとのように自慢をして回りました。

ケースコンペティションはテーマが毎回異なる一回勝負、母国語ではない英語でのプレゼンテーションと質疑応答。それでも日本人チームで世界中のMBA生達を押さえ込んでの優勝。もちろん、誰が聞いても納得感の有る提案内容。

いつも深夜の学校で目の下にクマを作りながらも真剣に議論を重ねている彼らの姿を見て、学ばせてもらいました。:

  • 限られた時間内に成果を出すには、言語・議論方法・前提知識などは共通のものが有る方が効率的
  • 良い議論を行う為にはチームメンバー内の信頼関係が必須
  • 提案内容案に対し、第三者からフィードバックをもらうことでアイディアの硬直化を回避 (彼らはチームの枠を超え、多くの人たちに意見を求めていた)
  • 審査員との想定問答には十二分に準備
  • 直前まで練習に練習を重ねることで、英語のハンデも乗り越えられる!

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後日談ですが、自分とチームを組んだイスラエル人が母国紹介のプレゼンテーションをした時が有りました。イスラエルって、とても難しい歴史を抱えていますし常に戦争と隣り合わせで、何が本当に正しいかは自分の頭で多面的に考えなければいけない、特に体制や権力の言うことは鵜呑みにせず疑ってかかれ、と教わるとのこと。そしてビジネスでは、安易に結論を導こうとしてはいけず、最後の最後まで色んな可能性を検討することが良しとされているようです。それこそ正に自分が苦しめられたこと! 彼は悪気が有ってやっていたわけではなく、良いものを作る為に貢献しようと真剣に取り組んでいたことを理解した時でした。。。

ダイバーシティって、そのメリットが大きいながら活かし方が本当に難しいですね。どうすれば効果的なチームワークを生めるか、コツを学んだ授業が有りましたのでそれはまたこんど。

See you!

アメリカのトップMBAを取得し、卒業後にアメリカ企業本社の幹部候補生として採用されたノウハウを紹介しています。

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ブログを引っ越しました。→https://presence-japan.com/blog/

現在、プレゼンスジャパン株式会社としてエグゼクティブコーチングを提供しています。

プロフィール
西原哲夫
西原哲夫
経営アドバイザー | エグゼクティブコーチ
慶應→住友電工→アメリカ駐在(25歳)→ノースカロライナ大MBA(30歳)→エマソン米国本社幹部候補(32歳)→日本エマソンGM(35歳)→ユーピーエス社長(39歳)→経営アドバイザー兼コーチ(今) | 2児の父親|アメリカ在住10年|表千家茶道学習者
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