エッセンシャル思考 (その5・最後):自分の人生の目的を考え定め、そぐわないものはそぎ落としていくプロセスが、エッセンシャルな生き様
本書の最終パートは、「決めた目標をどうやって実行するか?」という点について。ここで重要なことは、無理をしない、ということ。精神論や根性論では長続きをさせることが難しいので、やりたいことをできるだけ日常生活に溶け込ませ、無理せず続けられるようにすることが推奨されています。以前に習慣の力や意志の力について学んだときにも触れましたが、同じことですね。三日坊主は人間の自然な姿であるので、新しい習慣を身につけるためには、少しずつ少しずつ、慣らしていく必要があるということ。
新しい目標を立てるたびに「よーし、今回はやるぞー!今回は本気だぜー!」とバタバタしていた過去の自分に、「まぁまぁ、まずは落ち着いて。そんなに力まない方が、もっと早く、もっと遠くまで、たどり着けるよ。」と言ってあげたい気分です。
Execute (実行する)
非・エッセンシャル思考の人が根性で目標を達成しようとするのに対し、エッセンシャル思考の人は、そのプロセスをシステム化し、余計な障害を取り除くことで、目標達成に向かってスムーズにすいすいと進んでいくものとのこと。じゃあ、そのシステムってどんなこと?という問いに対し、著者は以下のアイディアを勧めています。
Buffer (余裕をもつ)
まず、スケジュールや気持ちに余裕をもたせることが大切です。パンパンにつまったスケジュールや気持ちでは、何か突発なことが舞い込んだときに対応ができなくなります。「どんな突発なことが起きるか?」なんて、不確かであり誰にも分からないことですが、「不確かで突発なことが起きる」という事実については、100%確かなことです。自分の過去を振り返っても、不確かで突発なことは、必ず起こってきました。
そのとき、自分のスケジュールや気持ちに余裕が無いと、もうどうしようもなくなり、対応ができないもの。だからこそ、つねに余裕をもち、合わせて、将来の不確かさに対して準備をしておく必要があるのです。たとえば、ビジネスで打ち合わせを設定するとき、1時間くらいかかりそうだな、と思ったら、余裕をもって30分を追加しておくのです。
Subtract (障害を取り除く)
目標達成に向けて進む中で、なにか障害になるようなことがあれば、それを積極的に取り除きましょう。なかなか思うように前進しないとき、「もっと気合を入れて!」「もっと時間をかけて!」と考えるのではなく、「なにが邪魔をしているのか?」と考えるのです。その邪魔なものさえ取り除ければ、余計に気合や時間を費やさなくても、スムーズに進むようになるのです。
このとき、次のことを考えることが有効だと言います。まず、自分の中での目標やゴールを明確化すること。これが出発点です。つぎに、その道のりの中で、なにが足を引っ張っているのかを考えます。そして、その障害となっているものを取り除くのです。完璧を目指さなくて良いので、少しでも取り除ければ、それでよしとします。たとえばダイエットが目標であれば、目の前にあるお菓子を我慢するのは非常につらいことですが、障害物を取り除く方法として、「お菓子を見ない」ようにするのです。お菓子売り場に近づかない、家にお菓子を置かない、など。
Progress (小さな成功を積み重ねる)
何か大きな目標を立てることは素晴らしいのですが、それがいきなり達成できることはありません。それよりも、それを分解し、小さな目標の積み重ねに組み替えて、少しずつ少しずつ、ひとつずつひとつずつ、成功を積み重ねていきましょう。目標を達成するためには自分を変える必要がありますが、いきなり大きく自分を変えることなどできないからです。だから、少しずつ自分を変え、少しずつ成功を収め、それを継続していくことで大きな目標にたどり着くことのほうが、よほど現実的で近道であるというわけです。大きなことを成し遂げたいと考えたときこそ、これを思い出したいと考えました。
このとき、目標達成までの道のりをビジュアル化すると、自分のモチベーションを保つのに良いらしいですよ。そういえば小学校のときに、「毎日、校庭をを走りましょう」というプログラムがあって、走った日には迷路のマスをひとつ、好きな色で塗りつぶしてよい、というものがありました。毎日走れば、ちゃんとその迷路が自分の好きな色で塗りつぶされていく仕組みです。ぼくたち小学生たちの良いモチベーションになっていた記憶があります。
Flow (自然に流れるようにする)
北京オリンピックでいくつもの金メダルをとった、水泳選手・マイケルフェルプスのルーティンが紹介されています。試合前には何時間前には何キロ泳ぎ、ストレッチはこう、座る場所はここ。試合じゃない時にも、朝晩に瞑想しながらイメージとレーニングをし、試合時とまったく同じ泳ぎを頭の中でイメージする。これをオリンピックで金メダルを取る前から、何年にもわたって繰り返していたということ。これによって、試合本番では、気合を入れることも根性を出すこともなく、ただいつも通りに泳ぐだけであったそう。
ぼくたちの脳というのは、恒常的に繰り返されることに身体を合わせるよう、シナプスをつなげていくものなので、自分が求める姿に、自分を合わせていくことを繰り返していれば、いつかはそこにたどり着くというわけです。時間がかかりますが、いつも理想の自分を思い描き、それに合わせるよう、少しずつ継続すればいいだけです。ストレス軽減の方法としてのヨガの効用について書いたことがありましたが、これも同じロジックとしてつながります。
Focus (“今”に集中する)
もうこれも、まさに言う通り、「今」に集中しましょう!ということ。過去にやってしまった失敗は数え上げればきりがないですし、かといって、見えない将来を不安に感じても、何にも生み出しません。ぼくたちが考えるべきは、「今」しかないのです。
「今、この瞬間、自分がすべきことは何か?」と自分に問い続けることが、一番効果的であるといいます。もし逆に、やるべきことが多すぎて判断がつかないようでしたら、すべてをリストに洗いざらい書き出して、「今じゃなくても良い」ものを一つずつ消していきましょう。そうすれば、残ったものが、まさに「今やるべきこと」となるのです。そして、一度に取り掛かるものは、ただ一つだけにするのです。「あれもこれも、複数のことをしながら」ではなく、選んだその一つに、今、集中して取り組むのです。
Be (エッセンシャルに生きる)
このエッセンシャル思考の究極のゴールは、エッセンシャルに「生きる」ことです。人生の生き方そのものをエッセンシャルにしてしまうことです。自分の人生の目的、そして生きることによって社会にどのように貢献しているのか、ということを自分の中で考え定め、それに向かって一直線に、連続する「今」を生き切りましょう、と、著者はアツく訴えています。
それは「選択の連続」でもあります。あらゆる選択肢の中から、今やるべきことを決めて実行するのは自分自身。家族との時間を過ごすでも、仕事に時間を費やすでも、友達と遊びに行くでも、一人で本を読むでも、すべて自分で選択して実行するのです。その行為そのものが人生であり、死ぬまでそれが連続していくことに過ぎません。
こうやって主体的に生きれば、自分の人生に充実感が増し、より楽しく過ごせるようになるもの。
まとめ
自分の人生の目的を考え定め、それにそぐわないものはそぎ落としていくプロセスが、エッセンシャルな生き様ということ。一朝一夕でできるものではなく、人生のすべてを通じて行う行為。エッセンシャル思考を身につけることも時間はかかるでしょうし、自分も環境も常に変化をしていく中、自分自身と向き合って本質を求め続けることこそが尊い、というわけなのですね。
ぼくも自分の人生の目的を今一度考え直し、そこに向かってまっすぐに進んでいきたいと考えさせてくれる、良い学びでした。