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内向的なぼくたちへ (その3) :一人でこもって考え働いた時の方が、チームで取り組むよりも、革新的な成果が出てくる

個人の力も、バカにできない

今回は、一人きりでこもって考え働いた時の方が、チームで取り組むよりも、革新的な成果が出てくる、という話です。「多様性をもつチームワークで働いたほうが、革新的なアイディアが生まれるものだ」というチームワーク神話に真っ向から挑戦する考え方ですが、あながち間違っていないとぼくは考えます。

もちろん多様性あるチームワークが機能するケースは多くあります。しかしそれは条件付きで、「チームワークに取り掛かる前に、個人がすでに一人の時間を持ち、じっくりと考え込んでいること」を担保しなければ成り立ちません。チームワークをはじめる前に、メンバーそれぞれが個人で考えを練り込んできてからでないと、本質的に重要なポイントが議論されにくいからです。また、人間が社会的な動物であることが災いし、一度チームで打ち合わせを持ってしまうと、中途半端な議論が既成事実化するというダウンサイドすら出てきます。だからこそ、内向的なパワーが積極的に見直されるべきで、まずは一人きりになって、じっくり考える時間を取ることが大事になるのです。

以前に、日本の国家プロジェクトである「スーパーコンピュータ・京」のリーダーとして世界一を取られた方のお話を伺うことがありました。「チームワークの力をどのように活用していますか?」とのぼくの質問に対してのお答えは、「チームワークの力には頼りません。一人でとことん考え抜いた方が効率的に最大の成果を出すことができます。」というもの。頭をガツンとやられたような気持ちになりました。

 

アップルコンピュータを創業した天才技術者・ウォズ

かのアップルの創業者として、いつもスティーブ・ジョブズにばかりスポットライトが当たりますが、技術をリードしていたのは共同創業者であるスティーブ・ウォズニアックで、通称ウォズ。1970年代当時、大学や企業などしか手が出せなかったくらいに大きくて高価だったコンピューターを、一般大衆の誰もが家で使えるようなコンパクトで手が届く価格のものにしたいという夢を見て、技術開発に成功して行った人です。

そんなエンジニアの星、ウォズは、とても内向的でシャイな性格で、社交とは縁遠く、いつも一人きりで仕事場にこもって開発にばかり打ち込んでいたことは有名な話。しかしそのスタイルがあったからこそ、技術革新に成功したとも言われています。初期のパーソナルコンピューターも、ウォズが一人で作り上げたものです。

そんなウォズが、こんな言葉を残しています。(本著より引用)

Most inventors and engineers I’ve met are like me – they’re shy and they live in their heads. They’re almost like artists. In fact, the very best of them are artists. And artists work best alone where they can control an invention’s design without a lot of other people designing it for marketing or some other committee. I don’t believe anything really revolutionary has been invented by committee. If you’re that rare engineer who’s an inventor and also an artist, I’m going to give you some advice that might be hard to take. That advice is: Work alone. You’re going to be best able to design revolutionary products and features if you’re working on your own. Not on a committee. Not on a team.

(ぼくの意訳)

これまで会ってきた最高の技術者やエンジニアは一概に、自分のようにシャイで、いつも頭の中の世界で生きているような人たちだ。彼ら彼女らは、いわばアーティストだ。事実、最高の人たちほど、アーティストなんだ。そして、そういうアーティストたちは、マーケティングからの要求を満たすわけでもなく、チームで決めたことに報いるためでもなく、誰にも邪魔されずにたった一人きりで最高のものを作ろうと仕事に向き合うものなのだ。チームワークのおかげで革新的なものが生まれた例なんて、自分は一つも知らない。もしあなたが技術革新のポテンシャルを持つ素晴らしいアーティストの可能性があるならば、アドバイスをしたい。受け入れがたいとは思うが、聞いてほしい。「一人きりで働くべきだ。一人きりで働いた時にはじめて、自分の最大限のポテンシャルを発揮し、最高の技術革新を生み出せることとなる。チームで働いたら、そんなことはできないことを覚えておいてほしい。」

 

チームワーク神話

現代ビジネスにおいて、ほぼすべての企業でチームワークを取り入れています。なぜなら、チームで働いた方が革新的なアイディアが次々に生まれやすい、という理由からです。最近では、オフィスにコラボレーションのためのスペースを設けるような企業も増えているようです。このため、学校教育においても、チームワークを磨くことを前提として、コミュニケーション能力の向上に重きが置かれています。ことば巧みにチームを引っ張ることができる人こそ、素晴らしいリーダーだと考えられるわけです。

しかし、そのような外交的なコミュニケーションが無い中でも、革新的なアイディアが生まれることも証明されています。たとえば、オープンソースで開発されるLinuxや、草の根の投稿が集まって成長したWikipediaなど。目に見えない人同士、まったくコミュニケーションなど持たないままに、こうした大規模で革新的な成果が生まれたのです。その陰には、ひたすらコンピュータの画面に向かっている内向的な人が数多くいたことでしょう。

 

ブレインストーミングは機能しない

今ではビジネスシーンで誰もが使うブレインストーミングという手法は、1930年代前後に広告業界で活躍したAlex Osbornという人によって生み出されました。彼の職場の従業員たちが、他の従業員たちから批判されたり言い返されたりすることを恐れ、自分らしいアイディアや考えを口にしない姿を見て考えついたものです。

基本的なルールは4つ:(1) 他人の意見を批判しない。(2) どんなに突飛なアイディアでも良い。(3) できるだけ数多くのアイディアを出す。(4) 他のメンバーのアイディアの上に積み上げる。

しかしその後、度重なるリサーチから導かれたことは、複数人で取り組むよりも、個人で取り組んだ方がよほど多くのアイディアが出てくるというもの。やはりぼくたち人間は、他の人からどう判断されるかが気になったり、アイディアを口に出すタイミングをはばかったり、自分個人の考えより自分以外の大勢が言うことの方を信頼したりするなど、どうしても個人としてのポテンシャルを解き放てなくなるものなのです。また、9人組のグループよりも6人組のグループの方が良い結果で、6人組のグループよりも4人組のグループの方が良い結果が出るなど、数が少ない方がパフォーマンスが上がることも実験結果として出ているようです。

 

Youtubeより、ウォズの動画(約5分)をリンクします。

続きは次回。