【要約レビュー】『ビジョナリー・カンパニー2』:良好から偉大への飛躍
これから益々ビジネスで活躍することを目指すあなたにおすすめの本。
ジム・コリンズ氏による「ビジョナリー・カンパニー2」です。
英語原書のタイトルは「Good to Great (グッド トゥー グレート)」で、飛躍する企業の条件や要因について解説するものです。
本書タイトルに「2」とある通り、ビジョナリー・カンパニーの第1弾もありますが、第1弾では「企業の生存には基本理念をもつこと重要であること」が説かれていました。
それに対し、ただ生存し続けるだけではなく、そこからさらに飛躍するための方法について模索したものが本書第2弾の内容となります。
「良好(Good)は偉大(Great)の敵」だとし、今のパフォーマンスに満足せず、どうすればさらなる成長や成果を手に入れられるか、高みを目指し続ける、すべてのビジネスパーソンたちに参考になります。
アメリカの経営者たちや、アメリカのトップMBA生たちに広く読まれ学ばれている一冊です。
こんな人におすすめ
・現状に満足せず、さらなる成長や成果を求める方
・経営やマネジメントにたずさわっている方
・チームワーク向上に悩んでいる方
・自分のマネジメントスキルを高めたいと考えている方
本の要約・ポイント
まず、過去の株式運用成績など複数の厳しい基準から、市場や競合企業と比較してパフォーマンスが大きく上回った企業トップ11社を選び抜きました。
さらに、どうしてそれらの会社が優れた業績を残すことが出来たのか、その要因や条件について分析をし、再現性のためのポイントをまとめています。
以下のポイントがそれであり、これらを参考にすることが、企業やチームのパフォーマンスが飛躍する近道となるのです。
第5水準のリーダーシップ
個人として有能であることはもちろん、マネージャーとして、経営者として有能であることもリーダーには求められます。
しかし、ただ「良好(Good)」なだけではなく「偉大(Great)」であることを目指すのであれば、第5水準のリーダーシップが求められます。
その第5水準とは、謙虚さや、プロフェッショナルとしての意志の強さを意味します。
派手であったり、コミュニケーションが上手であったり、またはあたかも強いリーダーのイメージを作り出してコストカットをしたりすることは重要ではなく、それよりも謙虚で、いかなる困難や障害も乗り越える意思の強さを持ち合わせていることが大切です。
最初に人を選び、その後に目標を選ぶ
飛躍する企業やチームでは、人材の選び方が重要です。
その際、ただ有能な人材を集めるだけではありません。
まずはじめに適切な人をバスに乗せ、不適格な人をバスから降ろし、その後にどこに行くかを決める、という順番をふみます。
適切な人たちの集まりであれば、たとえ最初の目標が誤っていたと分かったとしても、途中で進路変更を行うことが簡単に出来ます。
しかし、不適切な人がバスに乗っていると、途中で進路変更をしようとしてもスムーズには進みません。
また、最初に目標を選び、その達成に必要な人材を選ぶという考え方がありますが、偉大な企業ではそういったアプローチはとりません。
厳しい現実を直視する
偉大な企業は、どんなに厳しいものであっても、現実を直視し向き合う姿勢をもっています。
そのためには、上司や部下の立場を問わず、お互いの意見に耳を傾け合う社風があります。
またその際、建設的に対話や論争は行うものの、強制や非難は行わないことを大切にしています。
そして、どんな困難が目の前にあっても、最後は必ずやり遂げ、勝つことを信じています。
ハリネズミの概念
世の中にハリネズミとキツネの2つのタイプの人間がいるとした場合、偉大な企業はハリネズミ型のスタイルをとります。
これは、キツネがあの手この手でハリネズミを捕らえようとするのに対し、ハリネズミはいつでも体を小さく体を丸めて全身の針を逆立てることで迎えうつ、という随筆にならった考え方です。
言い換えると、キツネのように様々な方法や手段をとることではなく、自分にとって一番重要なアプローチを知っており、常にその本質を体現するというものです。
それは企業にとって、「情熱をもって取り組め」、「経済的原動力となり」、そして「自社が世界一になれる」ことの3点が同時に成り立つ概念を追い求め続けることが大切です。
規律の文化
偉大な業績を維持するカギは、みずから規律を守り、規律ある行動をとり、3点が重なるハリネズミの概念を熱狂的に重視する人たちが集まる企業文化を作り上げることにあります。
またその際、一貫性のあるシステムを守ることが重要である一方で、そのシステムの枠組みの中で、自由と責任を与えることも重要となります。
そういった文化をもつ企業は、外部からみれば月並みに見えることがありますが、実際に内部をくわしくみていくと、極端なほど勤勉で、驚くほど徹底して仕事に取り組む人たちが大勢います。
促進剤としての技術
流行の技術にすぐ飛び乗るような企業が多い中で、偉大な企業はどの技術を極めるか慎重に選び抜きます。
自社のハリネズミの概念にとって直接的に適合する技術であれば取り入れることを大いに検討しますが、そうでなければ飛び乗ることをしません。
技術はあくまで自社の中核となる強みを促進するものであり、技術だけによって勢いが作られたり偉大な企業になれたりするとは考えないのです。
弾み車と悪循環
弾み車とは、機械の動力をになう部品のことですが、最初に動き出すには継続してパワーを送り続けることが必要であるものの、それが動き出して積み重ねが続くと、大きな力で自走し続けることを意味します。
まさに偉大な企業こそ、外部からみれば劇的で革命的な飛躍に見えたとしても、実は内部では長い間にわたって成長の努力が続けられているのです。
長期間にわたって一貫性をもち、努力を続けていると、勢いが増してきて、やがて突破段階に入ります。
対して、一貫性の無い企業では、必要な準備すらせず一気に突破段階に入ろうとするのでうまくいかず、業績が期待外れになり、逆に悪循環に入っていってしまうことがあります。
ビジネスへの活かし方
このように、謙虚で意思の固いリーダーシップ、目標よりも先に適切な人材を選ぶことの大切さ、そして行動の核とすべきハリネズミの概念など、偉大な成果を上げるためのポイントが非常に参考になります。
これらを自分のビジネスに置き換えて考えるとき、以下のポイントから振り返ってみてはどうでしょうか?
自分の言動の背景に私心はないか?
第5水準のリーダーシップを目指すには、自分の言動は組織やチームのための貢献であるべきで、そこに自分だけ利することを目指すような指針があってはなりません。
何か決断するとき、何か行動するとき、「これは自分のためか?それともチームのためか?」自分に問うことで答えが出るでしょう。
チームメンバーに誰を選ぶか?
本書では「誰をバスに乗せるか?」という表現をしていますが、あなたがマネジャーであったりチームのリーダーであったりする場合、要職に誰を選ぶかが重要になります。
過去には大きな貢献をした人であっても、今は貢献できていないのであれば、バスから降りてもらうことも一案。
マネジャーよりも専門職としての方が力を発揮する人であれば、マネジャー職から降りてもらうことも一案。
本当に適格な人材だけを残し、適格でない人材はバスから降りてもらいましょう。その厳格さも求められています。
【まとめ】ビジョナリー・カンパニー:「良好」から「偉大」へ飛躍するために
このように、ただ「良好」なだけでなく「偉大」である企業の特色として、謙遜や意思の固さを中心とする第5水準のリーダーシップ、そして人材登用の重要さなどが学べる一冊でした。
またこれらの学びは決して経営者にだけ求められるものではなく、すべてのレベルの人たちに求められるものです。
ぜひ、自分自身の振り返りにも活用し、今よりも偉大な成果を求めていきましょう。
私たちはみんな、異なる個性や強みをもっています。かの知の巨匠、ピーター・ドラッカーも言っています、「自分の強みを活かそう!」と。あなたはどのように強みを活かしていますか?