ニューヨーク国際オートショーの陰で、最新技術を磨く新興勢力
北米の自動車市場が絶好調である。
コモディティである自動車が売れているということは、景気が良いと考えて良い。
中でも高価格帯の商品であるピックアップトラックが売れているということは、この先も底堅い経済成長が見込めると市場が考えている表れだ。
そんな中、先週までマンハッタンで開催されていたニューヨーク国際オートショー (New York International Auto Show – 自動車の展示会) に行って来た。
ニューヨーク国際オートショー【高級車路線で競争】
会場に入るや否や、目に飛び込んで来たのは高級車の数々。
各社並んで今の好景気がこの先も暫く続くであることを見越し、強気のラインアップをアピールしていたのだ。
展示されていたそれら高級車達は、強い購買意欲と自信を持った消費者達を惹きつけるべく、豪華なステージでキラキラと輝いていた。
近未来的なデザインに破壊的な馬力を併せ持つスポーツカー、広い室内スペースに高級ソファーのような上質革張りシートを這わせた優雅な乗用車。
来客者達はそれぞれの車に試乗してハンドルを握っては、「近い将来、自分もこんな車に乗るぞ!」と意気込み、力強い表情をして会場を後にしていた。
自動車の最新技術を磨く新興勢力
高級車ライアップを競う従来の自動車メーカーたちを横目に、自動車の最新技術の開発に取り組む新興勢力たちがいる。
それらは、電気自動車などの新技術であり、その興隆について近頃毎日のようにメディアが報じている。
アメリカではカリフォルニアに本社を置くTeslaが破竹の勢いで電気自動車の販売台数を伸ばしており、Googleは自動運転技術を磨き、Appleまでが電気自動車の生産・販売に参入する可能性が有る、といったニュースが流れている。
それに加えて台湾に本社を持つEMS (電子機器受託製造サービス) 世界最大手である鴻海 (ホンハイ) 精密工業 (通称フォックスコン) までもが電気自動車ビジネスに参入しており、自動車市場は下克上甚だしい大戦国時代に突入している。
これまではToyota・GM・Volks Wagenといった日米欧の自動車会社達がリードする時代が長く続いて来たが、「今年も主力自動車会社が軒並みシェアダウン!新興電気自動車会社達が一斉大躍進!」などという派手なニュースを目にする日が遠くないかもしれない。
中国ではすでに電気自動車が走り回る街がある
そのような中、アメリカからは地球の反対側に位置する中国に行って来た。
今回は中国の東南部、広東省の深圳エリア周辺が目的地であった。
深圳とは、北京・上海・広州に次ぐ、中国で4番目に大きな都市である。
香港に隣接し、1980年からは経済特区に指定されたこともあり、金融・情報通信・製造業を中心として急速に経済発展を遂げて来た。
そんな深圳エリアにはBYDといった中国を代表する電気自動車会社が本拠を構えているのだが、そこでもまた、各社がせっせと凌ぎを削ってテクノロジーの開発に勤しんでいる現実を目の当たりにした。
街中でタクシーを捕まえようとしていたところ、同行者が「折角だから電気自動車に乗ろう!」と言ってくれた。
タクシーが目の前に止まり、運転手と話すと、自分達がどちらの方面に行こうとしているかを慌しい口調で聞いて来る。
よく聞くと、「電池の残量が減っており、充電をしに行く為にもあちらの方面に向かわないといけない」と言っている。
運よく同じ方面であった為、その電気自動車タクシーを利用することになったが、乗り心地や性能は普通のガソリン車と全く変わらない。
目的地に到着し降車後、急いで充電地点まで向かって走り去って行ったその電気自動車タクシーの後姿を見て、数年後には更に多くの数の電気自動車が街中に溢れているであろうことを難なく想像出来た。
自分が初めて中国を訪れたのは約10年前。
その頃は自動車は高級品で、庶民が簡単に所有出来るものではなかった。
タクシーは多く走っており、「ププー!パパー!」と常にクラクションを鳴らし合い、3車線の道路でも気付けば5台がギリギリの車間を保ちながら我先にと並走しているような風景であった。
それから5年経った頃に再訪した際、一般庶民が車を所有し始めていて、地元で知り合った人から本人の車を見せてもらった。
図々しくも同乗させてもらった時、窓の開閉は電動スイッチではなくハンドル式の手動であった。
それから更に5年経った今、道路には電気自動車が走っている。
「十年一昔」とはよく言ったものだし、この先の10年がどのように変化していくか、全ての人の想像を超える結果が待っているだろう。