【本レビュー】『モチベーション3.0』:アメとムチの考え方は古い
これから益々ビジネスで活躍することを目指すあなたにおすすめの本。
今回は、ダニエル・ピンクによる「モチベーション3.0」です。英語原書のタイトルは「Drive (ドライブ)」で、「やる気!」という意味です。
人間はどういう時に一番やる気が引き出されるか、という内容が書かれています。
ダニエル・ピンクは他にも色々と面白い本を書いていますが、過去にアメリカ副大統領のスピーチライターをやっていただけあって、着目点が斬新ですし、文章も読みやすくわかりやすいです。
アメリカの経営者たちや、アメリカのトップMBA生たちに広く読まれ学ばれている一冊です。
こんな人におすすめ
・自己成長のために自分のモチベーションを上げたい方
・マネジメントに携わっていてチームのやる気を引き出したい方
・人間のやる気が出る仕組みを理解したい方
本の要約・ポイント
この本では、従来のモチベーションの仕組みや上げ方に疑問を投げかけ、新しいモチベーションの上げ方を提案しています。
その新しいモチベーションの仕組みこそ、「モチベーション3.0」。
人は誰かに言われたり報酬をもらえたりするからといってやる気が出るわけではありません。
自分が心の底から興味や関心があるものに取り組む時にはじめて、創造力が湧き上がるというもの。
これを読んだ誰もが「そうそう、そうなんだよ!」とひざを打ってうなずきたくなるような内容です。
モチベーションの考え方
食事や睡眠などといった、人間の基本的生存欲求を「モチベーション1.0」と呼ぶ時、報酬や罰をもちいて行動を駆り立てる時に使われる動機づけを「モチベーション2.0」と呼ぶことができます。
このモチベーション2.0では労働者は複雑な機械の部品のような存在だとみなされます。
たとえば、彼ら彼女らが正しい方法で、正しい時間に、正しく仕事をすれば、工場がスムーズに機能する。そしてそれに対しては見返りを与えてあげれば良いと、考えるのです。
このような外的な力、つまりは外発的動機づけが働く時、その動機づけにもとづいて人は正しく行動をし、その結果、労働者も組織も豊かになる、という考え方です。
実際、私たちの社会はこの方法で長い間回ってきたので、それが当たり前のようにも思えます。
しかしここ最近、そのモチベーション2.0がうまく機能しない例が多く発生するようになっています。
アメとムチではうまくいかない(モチベーション2.0)
このモチベーション2.0の報酬と罰は、アメとムチにも言い換えることができます。
アメとムチがうまくいくこともありますが、現代においてはほとんどがうまくいきません。
まず、報酬やアメを提示された途端に、やる気を失うことが散見されます。
言い換えると、せっかくの興味深い遊びであっても、そこに報酬が発生した途端に、いわゆる「仕事」になってしまうのです!
すると、創造性を働かせるモチベーションも下がってしまいます。
実際、ロウソクを壁につけるパズルのような実験をした際、報酬を提示されたグループよりも、無報酬でそのパズルに取り組んだグループの方が創造性を働かせ、より良い結果が出たという事例があります。
他にも、報酬つきで献血をお願いするよりも、無報酬で献血をお願いした方が内発的動機づけが働き、参加率が高くなるというケースもあるのです。
また、ビジネスにおいても報酬条件がついている場合、目標を達成するためには倫理的でない行動が取られることがあったり、短期的な目標達成にのみ注意が向けられたりするなど、正しい動機づけにならないことも発生してしまいます。
モチベーション3.0
アメとムチなどの外発的動機づけを中心としたモチベーション2.0に対し、今の時代は自分の内部から湧き上がる内発的動機づけが求められています。
そしてそれをモチベーション3.0と呼びます。
そのモチベーション3.0の特徴は、まず後天的に身につけることができること。長期的にモチベーション2.0による成果を大きく上回ること。モチベーション2.0と同じように金銭や他者からの評価も重視すること。やる気が無限に再生可能であること。肉体的にも精神的にも大いに満足できる状態がもたらされること。といったことが挙げられます。
そしてこのモチベーション3.0は、「自立性」「マスタリー(熟達)」「目的」といった3つの要素を拠り所にしています。
要素1「自律性」
モチベーション3.0の3つの要素のうちひとつ目は自律性です。
これは、自分の好きなように自由に仕事をすることです。
これによって大きくモチベーションを上げることができます。
誰かにマネジメントされ、あたかも駒のひとつのように働くことは、決してモチベーションを上げることにはつながりません。
この自律性を考える時、4つの側面が重要になります。
ひとつが課題です。どの課題に取り組むべきか、一部、本人にも裁量を持たせることで本人のやる気が上がります。
次は、時間です。時間単価で報酬を定めるのではなく、本人の好きな時間で仕事にあたってもらい、その成果によって報酬を支払うのです。
3つ目が手法です。仕事に取り組む際、決まったマニュアルを押しつけるのではなく、本人のやりやすい手法を認めることです。
そして4つ目が、チームです。これはなかなか難しいのですが、一緒に働く人を選べると、さらにモチベーションが上がります。
要素2「マスタリー(熟達)」
モチベーション2.0というアメとムチの時代では、ただ従順な従業員が求められていましたが、モチベーション3.0では、より積極的に関与する従業員が求められます。
積極的に関与する中で、その仕事に没頭し、さらなる上達を求め続ける中で、成果も合わせて上がってくるという考え方です。
このマスタリーには3つの法則があります。
一つは、学びたい、上達したい、というマインドセットが重要ということです。
また、このマスタリーの道中は苦痛の連続で、楽な道ではありません。
そしてその上達の道は漸近線であり、決して完成されない修行なのです。
ただ、いつまでたっても完成しないからこそ、そこを歩む人にとっては魅力的であり、永続的に続くモチベーションになるのです。
要素3「目的」
人間には富や金銭だけでは満たすことのできない欲があります。
それは、自分たちよりも何か大きなものに属し、その目的に向かって貢献した実感を得たい、というものです。
利益至上主義がうまくいかない理由がこれで、目的をもって人生を送りたいという根本的な欲求を見逃してはならないというわけです。
モチベーション3.0を発揮するポイント
モチベーション3.0を発揮するために、いくつかできることがあります。
たとえば自分自身に対して、自分の人生を一言で表す文章を考えてみたり、昨日より今日の方が成長しているかと自分自身に質問をしてみたりすることです。
また組織のモチベーションを考えるなら、自分の好きなプロジェクトに没頭できる時間や制度を設けてみることも一案です。
さらに、公平であることや報酬が平均よりも高いことを確認すると、モチベーションが上がりやすくなります。
自分自身への活かし方
この「モチベーション3.0」はいかがでしたでしょうか?
ぼくも人生を振り返ると、アメとムチの仕組みの中で教育を受けましたし、仕事もしてきました。
しかし、それによってやる気が上がる時もありましたが、ほとんどの場合はなぜだかすぐにやる気を失ってしまったこともあります。
逆に、誰からも指示されたわけではなく、自分の興味や関心のみで行動していたことは長く続いたりもしました。
こうしてその仕組みを学ぶと納得がいきますね。
自分のモチベーションを上げる
自分のモチベーションを上げるには、人から指示されたり期待されたりしているものよりも、自分自身が素直にやりたいと考えることに取り組むことが何より大切だと考えられます。
特に、<課題>何に取り組むか、<時間>自分の好きな時間で取り組めるか、<手法>自分の好きなやり方で取り組めるか、そして<チーム>自分が好きな人と働けるか、といった4つの点に自律性をもてるかどうかが重要なポイントとなります。
これらが満たされると自然とモチベーションが上がるでしょうから、しっかりと確保したいところです。
チームのモチベーションを上げる
モチベーションが内部から湧き上がるよう、自律性・マスタリー・目的を大切にすることは、自分に対してだけではなく、一緒に働くチームメンバーに対しても同じように重要なことです。
ですから、チームのモチベーションを上げたいと考える時、仕事のやり方や時間管理を一方的に押しつけたり条件付けをしたりするのではなく、本人たちに自律性をもってもらうことが大切だと考えることができます。
また、それぞれのマスタリーを追求する余裕を与えたり、目的を共有したりすることで、モチベーションアップにつながると考えられます。
【まとめ】現代はモチベーション3.0という内発的動機づけが重要
このように、アメとムチが機能した時代は昔のことであり、現代にはほとんど通用しないことが分かります。
実際、自分自身もモチベーション3.0によって行動していることも理解できましたので、自分に対して、そして一緒に働くチームメンバーに対しても、モチベーションを上げるために「自律性」「マスタリー(熟達)」「目的」という3点を満たしてあげることが大事であると、よく分かる一冊でした。
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか