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本要約『スタンフォードの自分を変える教室』【意志の力は鍛えられる】

“いつも何か心に決めてはじめても、意志の力が弱くて挫折してしまいます。これを改善したいのですが、何か参考になる情報はありますか?”

こういった悩みを抱えている方に、おすすめの本があります。

本「スタンフォードの自分を変える教室」です。

スタンフォード大学で心理学を研究する著者が書いたもので、意志の力の鍛え方について学べます。

ダイエットや健康管理、禁酒禁煙に勉強など、次は挫折しないよう、要約まとめを紹介します。

長文になりますので、じっくりと向き合いたい人向けです。

 

目次
  1. 本要約『スタンフォードの自分を変える教室』【意志の力は鍛えられる】
  2. 意志の力を筋肉と同じように扱う
  3. 衝動の正体ドーパミンを手なずける
  4. 目の前の誘惑に負けない方法
  5. 誘惑と上手につき合う
  6. まとめ

本要約『スタンフォードの自分を変える教室』【意志の力は鍛えられる】

意志の力には三つある

まず、意志の力には三つの種類があることを理解します。

一つ目は、甘いものやタバコなどを我慢しようとする意志。

二つ目は、マラソンや勉強など、やると決めたことをやり抜く意志。

そして三つ目は、一つ目と二つ目の意志の源となる、将来の目標を達成しようとする意志。

一つ目と二つ目は、誘惑にかられた時に必要となる意志ですが、どちらも、三つ目の長期的な意志があってはじめて、効力を発揮します。

つまり、自分の中での長期的なモチベーションを見つけることが、意志の力を発揮する際の第一歩というわけです。

人間に意志の力がある理由

まず、石器時代のことを考えましょう。

食べ物を探して歩いていたところ、なんと逆に、自分を食べ物として狙っているトラに遭遇してしまいます。

こんな時、一人で戦っても勝ち目はないので、常に誰かと一緒に行動することが求められるようになるのです。

つまり、誰かと一緒に生きていくことが必要となり、すると、わがままや勝手はできなくなり、そこで意志の力が必要になります。

どんなにお腹が空いていても、みんなのゴハンを一人で勝手に食べてしまっては怒られますし、仲間はずれにされてしまうからです。

そこで、目の前にゴハンがあっても、状況をわきまえて我慢をするという、意志の力が発達したわけです。

現代においても、人間が社会的な動物であることには変わりなく、意志の力がある人の方が成功していることから、その性質は石器時代からなんら変わっていないということが言えます。

前頭前皮質が意志の力をつかさどっている

人間の脳の中では、前頭葉の前側の領域である、「前頭前皮質 (ぜんとうぜんひしつ・Prefrontal Cortex) 」が意志の力をつかさどっています。

ここから、我慢する意志、やりとげる意志、そしてモチベーションとしての意志もコントロールしています。

過去に事故に遭って前頭前皮質を損傷した人がいるのですが、事故の前までは「鉄の意志をもった人間」と尊敬されていたにもかかわらず、その不運な事故の後には、わがまま放題の勝手な性格となり、前頭前皮質の機能が失われたことがその状況を物語るという事例がありました。

そして実はこの前頭前皮質、物理的に損傷をしていなくても、酔っ払っていたり、寝不足だったりするとうまく機能が働かず、人間の合理的な判断力を奪うことがわかっています。

衝動に駆られることは人間の性質

ダイエット中に糖質たっぷりのケーキについつい手が伸びて後悔することは誰しもが経験あることでしょうが、これは仕方のないこと。

なぜなら、石器時代には食べ物が貴重であり、常に食べられるものではなかったため、糖質や脂質がたっぷりの食べ物を目の前にすると、脳から「ある時に食べておくんだ!」と指令が出るようになっていたからです。

全ては生き抜くための身体の機能なんですね。

しかし逆に現代では、糖質や脂質がたっぷりの食べ物を食べすぎると生存が脅かされることを脳が覚えてきたため、「食べたらダメだ!」という指令も同時に出るようになったのです。

つまり、ぼくたちの脳からは、二つの異なる指令が出ていて、それがぼくたちを困らせてしまう結果となっているのです。

前頭前皮質を上手に働かせるために

しかし現代を生きる我々は、なんとかして前頭前皮質にしっかりと働いてもらい、意志の力を十二分に発揮してもらいたい。

そこで、前頭前皮質がどういう状況だと機能低下に陥るかを理解する必要があります。

それは、注意力散漫である状態、酔っ払っている状態、寝不足である状態、などです。

そういう状態である時には、意志の力は弱くなってしまうということです。

意志の力は鍛えられる

神経科学の領域では、意志の力は鍛えられるということが分かってきています。

それは、数学の問題を解くことや、集中力を鍛えることで可能なのですが、一番簡単な方法として、瞑想でも意志の力が鍛えられることが分かっています。

瞑想の最中には、「何も頭に浮かばない状態」を目指すものの、必ず何かの考えが頭の中に浮かんできます。

それをまた、何も考えていない状態にしようと、自分の呼吸に集中しようとする行為そのものが集中力を高め、意志の力を鍛えてくれます。

よって、「いつまでたっても余計なことが頭に浮かぶ」ということに悩む必要はなく、それをただ繰り返せば良いのです。

生存の危機に面した時に、人間の身体に起こること

石器時代に、道ばたでトラに遭遇してしまった時、人間の身体は「戦うか逃げるか (Fight or Flight) 」という状態を示します。

これは、脳が危険事態を認識すると、身体からストレスホルモンが出され、体内血液の血糖値が上がり、心拍数を上げることで身体中に酸素を巡らせることで、筋肉システムが俊敏に反応できるような状態を作り上げます。

いわば、緊張してドキドキしている状態ですね。

そしてこの時に必要なことはとっさの行動であり、「合理的な判断はいかにあるべきか?」などと悠長なことを考えているヒマはないため、前頭前皮質はスリープモードに入り、機能しなくなります。

トラを目の前にした時に必要な機能として、生存のために発達したものです。

逆に現代になってからは、トラの脅威は無くなったものの、糖質たっぷりのチーズケーキやタバコなどが生存に影響する脅威となってきました。

これらは急に襲いかかってくるものではないものの、ぼくたち人間は衝動にかられて手を出したくなります。

そこで前頭前皮質から、「止まって考える (Pause and Plan) 」という指令が出ます。

この時、Fight or Flight とは逆に、心拍数は下がり、血圧も下がるという状態に導きます。

いずれのケースも、ぼくたちの脳や身体は、ぼくたちを生存の脅威から守るために一生懸命に働いてくれていることを示しています。

意志の力は蓄えることができる

意志の力は蓄えることが可能で、その方法の一つが、ゆっくりと呼吸をすることです。

1回の呼吸を10秒から15秒かけて、ゆっくりと呼吸をすると、ストレス耐性が強まり、意志の力を蓄えることができます。

そして、うつ病対策にも良いと言われています。

他にも、やり方や継続時間を問わず、運動することも意志力を蓄えることに有効であるというリサーチ結果も出ています。

睡眠が大事!

ぼくたちの脳は、活動するときにグルコースを使うのですが、このグルコース、身体が疲れていたり、寝不足だったりすると、うまく血液から吸収することができず、脳まで回らないのです。

結果として、寝不足の状態だと意志の力が弱くなり、イライラし、合理的な判断ができなくなります。

砂糖やカフェインを摂ったところで助けにならないことも分かっています。

たとえ前日に寝不足であったとしても、昼寝をするなどして、できるだけ早く睡眠時間を取り戻すことが強く勧められています。

意志の力を筋肉と同じように扱う

意志の力は、筋肉と同じ

意志の力は筋肉と同じで、使うと疲労し、回復のための休憩が必要となります。

その間、意志の力が働かないので、誘惑にかられると負けてしまいます。

一度使うと、無くなってしまうのです。リサーチによると、意志の力は、朝起きた時が最もみなぎっており、時間とともに費やされて減っていくことが分かっています。

つまり、1日の終わりに大事な仕事に取りかかろうとしても、すでに日中に意志の力を使ってしまっているため、何も残っていない状態になっているのです。

よって、1日の終わりに差しかかるほど、誘惑にも負けやすくなります。

また、朝の早い時間から、一度に多くのことを合わせて取りかかると、それだけ意志の力を使うため、午後には何も残っていないということにもなるのです。

このように、意志の力には限りがある、ということを認識することが重要です。

大事なことは先にやる

意志の力は朝に一番みなぎっていて、そこから夜にかけて減っていく一方ですので、大事なことは1日の初めにやってしまいましょう。

午後になんてなると、もうやる気が起きなくなっていますから。ぼくも、職場に行ってまず最初にすることは、メールのチェックではなく、アウトプットにつながる仕事です。

意志の力が一番高い、朝一番の数時間で、最もパワーを必要とする仕事に取りかかり、メールチェックのような、それほどパワーを必要としないものは、その後に取りかかるようにしています。

甘いものをとると意志の力が回復する

面白いことに、脳内血糖値を測ると、意志の力の残量が分かるようです。

意志の力を使うとき、まさにエネルギー源として糖質を使うため、使えば使うほど、それが減っていくというわけです。

もっと面白いことには、すでに意志の力を使って疲れてしまった人に甘いものを食べてもらうと、脳内血糖値が上がり、意志の力まで回復することが分かっています。

疲れた時には甘いもの、ということは本当なんですね。

甘いものをとって意志の力が回復した人は、我慢強くなり、わがままも言わなくなるのです。

逆に、疲れてしまった人は、すぐに愚痴をこぼしたり、わがままを言ったりするようになるのです。

とは言っても、甘いものを過剰摂取する必要はなく、小さいミント粒ひとつで1分ほど意志の力がたもてるようです。

フリスクを食べ続けるのもいいかもしれません。

脳みそは石器時代のまま、エネルギーをコントロールしている

朝一番など、エネルギーがみなぎっている時には、脳みそはじゃんじゃんと意志の力を使うように指示してくれるのですが、エネルギーが無くなってくると、危険を感じて、「もう無いよ!」とエネルギーの放出を止めるようになります。

実はまだ少し残っていたとしても、ピタリと止めてしまいます。

実はこれには理由がありまして、その昔の石器時代、食べ物が貴重だった時、次の食べ物にありつけるあてがあるまでエネルギーの節約モードに入るからなのです。

現代では、食べ物が簡単に手に入りますから、エネルギーを使い果たしてもすぐに充填することができます。

しかし石器時代には、一度無くなってしまうと、もうそこで果てるしかありませんので、エネルギー残量が少なくなると、一切の無駄な行為をやめるように脳が身体中に指令を出すのです。

そしてここがものすごく面白いのですが、エネルギー残量が少ない状態、つまりは食べ物に飢えている状態になると、リスクに対する許容度が一気に高まります。

つまり、「なんでもいいから食べないと!」という状態になるわけです。

これ、現代に置き換えると、ぼくたちが疲れている時、リスク許容度が高まって、合理的な判断ができなくなってくる、というわけです。

例えば、お昼ご飯の前の会議では (早くご飯を食べに行きたいから)、よく熟考せずにビジネスの決断を下してしまう、など。

ダイエットしている時に、リバウンドで食べ過ぎちゃうことも同じですね。

疲れている時こそ、誘惑に負けるのです!

筋肉のように意志の力を鍛える

ただ、良いニュースとしては、この意志の力は筋肉と同じように、鍛えることができます。

それは、使えば使うほどに強くなるというもの。

例えば、座っている時に足を組まないとか、毎日5分間の瞑想をするとか、テレビを観て無駄な時間を過ごさないとか、小さなことで良いのです。

一度に使いすぎると疲弊してエネルギー節約モードに入ってしまうので、疲弊しすぎない程度に、コツコツと小さなことで意志の力を使い続け、鍛えていけば良いのです。

よって、大きな目標を持っていたとしても、小さく小さく継続していくことが肝心です。

そしてまた、これも筋肉と同じで、使わないと衰えていくので、意志の力も継続して使うことが大事ですので気をつけましょう。

脳はいつも、「頑張った後には、ごほうび」を求めている

今日は頑張ったから、ちょっと自分にごほうびをあげよう、だなんて皆さんも考えますよね?

脳はいつだって、ごほうびを求めて活動しているので、意志の力を使った後にこそ、ごほうびを積極的に求めてきます。

実はこれがタチが悪いのですが、「良いこと」をしたあとには「悪いこと」をして相殺しようとする性質を持っているのです。

例えば、ダイエットのために一生懸命にジョギングをした後、「今日はたくさん運動したから」と考えて、いつもより多く食べてしまうことが、それです。

むしろ、本能が求める「悪いこと」をするために、我慢して「良いこと」をするとも言えるのです。

もちろんぼくたちは、そんなことを意識していないのですが、ついつい無意識のうちに、「頑張って運動をした」のだから、「ごほうび」が与えられて当然だ。

いわば、「ごほうび」を得るために、「頑張って運動をした」というように脳が錯覚してしまいます。

この状態を避けるためには、自分が求めている「ごほうび」とは、体重を落として健康的になることなど、「長期的な目標」であって、「食べること」ではないのだと、自分に思い出させなければいけません。

脳はいつも、「ごほうび」を得るための「いいわけ」を探している

「オーガニックのクッキー」なんてものを見つけると、脳は「オーガニックなんだからいいじゃないか!」と「いいわけ」を見つけてなんとかクッキーを食べようとします。

また、「高級ブランド品が今だけ半額セール」なんてものを見つけた時、「ああ、半額セールは今しかない!」と「いいわけ」を見つけては、その高級ブランド品を買おうとします。

脳は「ごほうび」を得るために、なんとかして「いいわけ」を探し出してくることに長けていますので、気をつけなければいけません。

ここでもまた、本当のごほうびは長期的な目標を達成することであり、それは「オーガニック」でも「半額セール」でも満たされるものではないことを、自分に思い出させなければいけないのです。

衝動の正体ドーパミンを手なずける

脳内にある「ごほうびシステム」

ぼくたちの脳の中には「ごほうびシステム」と呼ばれる働きがあります。

これは、古代より人間が生まれ持ったもので、目の前にある食べものに手を伸ばすことなど、何か行動することが必要になる時に活性化し、ぼくたちの「欲しい!」という気持ちをかり立てます。

これはネズミでも人間でも証明されている働きです。

そしてこの機能が刺激されると、「欲しい!もっと欲しい!」と繰り返すことを要求するようにできています。

現代であれば、レストランのメニューを見た時やテレビCMを見た時などに、この「ごほうびシステム」が働き、ぼくたちの「欲しい!」という気持ちがかり立てられるわけです。

「ごほうびシステム」が刺激されると、ドーパミンが放出される

ぼくたちの脳がごほうびを認識し、「欲しい!」という気持ちがかり立てられると、それと合わせてドーパミンが放出されます。

ドーパミンが放出されると、脳内に信号が出され、目当てのものに意識を集中するように身体が仕向けられます。

ここでポイントになるのは、ドーパミン自体が満足感を与えてくれるわけではないということ。

ドーパミンはあくまで、「欲しい!」と感じて興奮し、目当てのものに意識を集中させるまで。いわば、それを手に入れたらさぞかし快感を得られるのだろうなぁ、と期待させるところまでです。

実際は、快楽も満足感も、本当のごほうびすらも手に入れられていないのにもかかわらず、脳が喜びを感じている状態のこと。

かの有名なパブロフの犬の実験も、これです。

鈴の音を聞くだけでエサをもらえると勘違いをしてしてヨダレが出てくるというものですが、あくまで満足感を期待しているだけで、実際に満足感を得ているわけではありません。

それでも、鈴の音を聞くたびに喜んでヨダレを垂らすのです。

人間でも同じことが確認されています。

スロットゲームのように、当たりの絵があらわれた時にボタンを押すとお金がもらえるという実験がなされました。

すると、繰り返すうちに、お金がもらえているわけではないのに、当たりの絵があらわれた時、すでに被験者の脳内からドーパミンが放出されていることが確認されました。

まだお金を手にしていないのにもかかわらず、期待に胸を膨らませることで喜びを感じてしまっているため、当たりの絵が出てくるだけで嬉しくなり、もっともっとと、ボタンを押し続けるわけです。

これが「ごほうびシステム」の仕組みであり、美味しそうなご飯を目にした時、良い香りのコーヒーの匂いをかいだ時なども同じような現象が起きます。

ご飯やコーヒーを口にする前から、ドーパミンが放出され、脳が喜びを感じるというわけです。

これは石器時代の名残りで、たまに見つける食料を目の前にした時、食べることに集中させることで生存確率を高めるように進化したからです。

実は、食べた後の満足感を得るという機能は発達しておらず、食べる前に「欲しい!」とかり立てられることで「嬉しく感じる」ように仕組まれているだけ。

というのも、食べてしまいすれば、目的を果たしているから、というわけです。高脂質で高糖質の食べものを見たり匂いをかいだりしたりなんかすると、「ああ、食べた〜い!」とそそられ、そのそそられている時にすでに喜びを感じているのです。

すでにお気づきかもしれませんが、そんな高脂質で高糖質の食べものがある限り、「欲しい!」とかり立てられ、喜びを感じられるようにできているので、ぼくたちはエンドレスにその食べものを求めるように出来ています。

「欲しい!」とかり立てられるのは、食べものだけではない

最近流行りのSNSやメール、テキストメッセージだって、一度自分の「ごほうびシステム」に登録されると、その先も自分を誘惑し続けることになります。

他にも、Youtube動画なんかもそうで、面白い動画を求めては、次の動画、次の動画、とひたすらクリックし続けたくなることもあるのです。

典型的なのはビデオゲームですね。

一つのステージをクリアすると必ずごほうびがもらえ、また次のステージをクリアすると、また必ずごほうびがもらえるように出来ているので、ぼくたちはドーパミンをバンバン放出しながらビデオゲームにはまるのです。

自分はどんなことに「ごほうびシステム」をかり立てているか、是非、自分自身のことをよく観察して、見つけてみましょう。

「欲しい!」という衝動は、悪いことばかりではない

意志の力でコントロールすることを必要とする、この「欲しい!」という衝動ですが、悪いことばかりではありません。

ドーパミンが欠乏するパーキンソン病においては、身体の動きが遅くなったり、うつ状態になったりします。

そこで対処療法として、脳内でドーパミンが作られ放出される機能を助けることを促すのです。このように、ドーパミンのおかげで快楽を求める衝動にかられてしまうことも事実ですが、それがないと生活に彩りがなくなってしまうということもまた、事実なのです。

マーケティングに活用される例

この人間の脳・身体の仕組みが研究されるにつれ、マーケティングに活用される例も増えてきています。

例えば、食品スーパーの店頭に無料サンプルの食べものを置いておくのです。

すると、それを見た脳が「欲しい!」とかり立てられ、ドーパミンが放出され、何が何でもそれを手に入れようとするようになるのです。

また、ぼくたちの脳は常に「貴重なもの」に反応するようにも出来ているので、コーヒーチェーンなんかが「今の季節だけの特別フレーバー」だなんてものを発売すると、これまたドーパミンが出てきて買ってしまうわけです。

「今だけ半額セール!」なんていうのも、「今しかない貴重な瞬間だ」と脳が判断し、石器時代の通りに、「食べられるときに食べないといけない!」と認識したら最後、ドーパミンがじゃんじゃん出てきます。

もしぼくたちの周りに、「ヒマだからウィンドウショッピングに行ってくる」なんて言っている人がいたら、その人の脳の中ではすでにドーパミンが出てきていると考えて良さそうですね。

ドーパミンを上手に活用するには

ドーパミンを上手に活用するには、例えば、お気に入りのカフェで宿題をする、やる気の出る音楽を聴きながら運動をする、といったものが挙げられます。

カフェも音楽もドーパミンを放出する手助けをしてくれるので、その力を借りて、宿題や運動に当たれば良いというわけです。

ドーパミンのダークサイド

上に書いた通り、ドーパミンの仕事はあくまで快楽を期待し、求めるところまでです。

よって、実際に快楽を得られるわけではありません。

そして実はこの際、「本当に手に入れられるかなあ。」と心配になるような、ストレスホルモンが出てくることも分かっています。

「欲しいけど、心配。だから、どうしても欲しくなる。」という感情のサイクルに入るようにできているのです。

そしてこのサイクルを繰り返すと、それが手に入らない自分がどんどんとみじめに感じられるようになるだけではなく、いつまで経ってもその感情のサイクルを止められなくなります。

よって、ぼくたちがするべきことというのは、「自分が求めていることは、ジャンクフードのような、ただの短期的な快楽のためのものか、それとも長期的な意義ある目標達成なのか?」と自分自身に対して意識して問いかけ続けることなのです。

その区分ができた時にはじめて、ドーパミンは現代を生きるぼくたちの味方になってくれるのです。

一度誘惑に負けると、自暴自棄になる

「これまでずっとダイエットをしてきたのに、クッキーを少し食べてしまって自分が嫌だ。でも、もうこうなったら、今日だけは特別だ、もっと食べてしまえ!」

人間は、一度誘惑に負けると、自暴自棄になるように出来ています。

なぜなら、誘惑に負けたところで、自分が嫌になり、結果としてストレス値が上がり、そのストレスをなんとかしずめようと安易な解決方法に走るからです。

安易な解決方法とは、そう、目の前のクッキーをもっと食べてしまうことです。

いつも気をつけているはずのポテトチップスの袋を、ひとたび開けた途端、気付いたら食べ過ぎていて自分が嫌になったものの、また次に気付いた時には袋がからっぽになっていた、というのはまさにこれです。

ぼくもこのような失敗は何度も経験しています。

ストレスは大敵

自制しようとしている時、ストレスは大敵です。

例えば、怖い映画を見た時、深夜残業で疲れている時、わずかなことでもストレスを感じると、そのストレスを癒すために身体が解決方法を欲するようになります。

そして、ついつい目の前の食べものを食べ過ぎることがあります。

タバコの箱に警告文が表示されるようになってしばらく経ちますが、実はあれもある意味でストレスを与えており、喫煙者はそのストレスをしずめるためにタバコを吸って落ち着こうとする傾向にあることが分かっています。

逆効果というわけです。

誘惑に負けてしまった時に取るべき行動

よって、誘惑に負けてしまった時、決して自分を責めてはいけません。

自分を責めると、さらにストレス値が上がり、よりいっそう、目の前の誘惑にかり立てられるようになってしまうからです。

「ああ、なんてことだ、自分は本当に意志の弱いダメな人間だ。しっかりしろ、自分!」などとは絶対に考えないようにしましょう。

そこで、このストレスを別の方法でしずめるため、自分のことをなぐさめ、認め、勇気づけてあげるようにしましょう。

あたかも自分のメンターや親友になったつもりで、「大丈夫、そんな時もあるさ。でもずっと頑張ってきたんだから、これからもまた続けていくだけだよ。絶対にできるから。」と温かい言葉をかけてあげましょう。

そうすればストレスをしずめることができ、目の前の安易な誘惑に負けることがなくなります。

目の前の誘惑に負けない方法

ぼくたち人間は将来のことを正しく考えることが苦手

ぼくたち人間は、将来のことを考えることが得意なようで、実は苦手です。

脳内システムが、目の前のごほうびに飛びつくようにできているからです。

たとえば、「目の前の好物を2つ食べることができるけれど、2分待ったら6個に増えるよ!」と言う実験をチンパンジーと人間の両方にした際、チンパンジーの方が我慢して2分待つ確率が高いのです。

そう、なんと、人間はチンパンジーよりも我慢できないのです。

「え、でもちょっと待ってよ。チンパンジーだって人間と一緒で、目の前の食べものに飛びつくように脳内システムができているんじゃないの?」と思ったあなたは大正解。

実は、人間の前頭前皮質はチンパンジーのものに比べてかなり発達しているため、我慢する意志の力どころか、「ただの実験でしょ」とか「こんなの2個も6個も同じような価値しか感じないね」などと、「自分に都合の良いようないいわけ」を考えつき、目の前のごほうびを正当化する賢さまで持っているのです。

賢すぎて、それがアダになっているわけですね。

人間は将来のことを考えることはできるものの、目の前の誘惑に負けて、都合の良いように曲解してしまうことが問題というわけです。

将来の大きなごほうびよりも、目の前の小さなごほうびが欲しい

石器時代のその昔、大平原を歩いていると、美味しそうな肉のかたまりが落ちています。

もっと先まで歩けば、もっと美味しそうな肉が落ちているかもしれませんが、そんな保証もありません。

ぼくだったら、そこで迷わずかじりつきますね。

後先のことなんて考える余裕はありません。

なぜなら、その目の前にある肉のかたまりを見過ごして、その先に何もなかったら、野たれ死にになりかねませんから。

人間の脳みそはこのようにできています。

つまり、目の前にごほうびがあると、それが一番価値あるものとして感じるようになているのです。

それもこれも全て、石器時代の時につちかった生存のための知恵です。

しかし現代では、食べものは溢れていて簡単に手に入りますし、逆に食べものなどの身近なごほうびばかりに気を取られていると、もっと大きな価値があることに取り組むことができません。

ましてや、手に入れるまで時間や労力がかかることの方が価値がある場合が多いわけです。

でも、将来の大きなごほうびに向けて腰をすえて取り組む必要があることが分かっていたとしても、石器時代の名残りから、ついつい、目の前のごほうびに手を伸ばしてしまうのです。

ダイエットが成功しないことも、テレビに何時間も費やしてしまうことも、これが原因です。

自分の脳内システムを将来の大きなごほうびに向ける方法

じゃあ、どうしたら目の前の小さなごほうびを我慢して、自分の脳内システムを将来の大きなごほうびに向けてあげることができるのか?

以下の取組みが推奨されています。

  • 目の前の小さなごほうびを10分ほど我慢する。10分我慢できれば、脳内システムはそれを将来のものと感じるようになり、興味を失うようになります。
  • 将来の大きなごほうびをイメージし、それをすでに手に入れている自分を想像する。そして、自分に問いかける。「この大きなごほうびを手放してまで、こんな小さなごほうびが欲しいのかい?」と。ぼくたちの脳みそは、目の前にあることや先に考えたことの方を価値あるものと認識するクセがあるので、それを逆手に取るのです。
  • 目の前の小さなごほうびを目の届かないところに追いやる。見えるからいけないのです。ジャンクフードは家の中から追放しましょう。

マシュマロテスト

有名な実験で、マシュマロテストというものがあります。

4歳児の目の前にマシュマロを1つ置き、「今これを食べてもいいし、待つことができたら後で2個食べることができるよ。」と伝えるのです。

そうすると、4歳児たちはなんとかして我慢して、なんとか2個に増やそうと頑張るのです。

途中で我慢できなくなって食べてしまう子もいれば、見ないようにしたり、自分の顔を叩いたりしながら、意志の力を使ってなんとか我慢しきることに成功する子もいます。

なんと驚くことに、その4歳児の10年後の様子を確認すると、我慢できた子供たちの方が、学業でも社会的にも成功しているという結果が出ていますので、ぼくたちも気をつけないといけないことが分かります。

人間は社会的な動物

よく、「人間は社会的な動物で、他の人から影響を受けやすい」ということが言われ、それがあたかも良くないことのように言われるのですが、これは仕方のないことです。

なぜならぼくたちはそのように出来ているからです。

人間一人の能力が限られている中、石器時代に衣食住を求めて生き残るためには、先人の教えを守ったり、仲間たちと同じように行動をすることが、もっとも効率の良いことだったからです。

だから、「みんながやっているなら、自分もやるべきだ。」という行動様式がぼくたちの脳の中に出来上がったのです。

ミラーニューロン

「他人がやっていることは、自分もやらないと」という意識が発達して、ぼくたちの脳の中では「ミラーニューロン」というものが発達しました。

ミラーとは文字どおりに鏡のことで、他人を見た時、鏡のように同じような行動をとるように脳から指示が出るようになっているのです。

足を組んでいる人の前ではついつい足を組んでしまい、笑っている人と一緒にいると、自分も笑ってしまうというわけです。

一緒にいると似てくる、というのもこれですね。

よって、「一緒にいたい人」、つまりは「同じようになりたい人」を意識して選ぶことも大切になってきます。

誘惑と上手につき合う

「考えてはいけない!」と考えるほど、考えてしまう

「頭の中で、シロクマのことを想像してください。はい、ではこれから5分間、そのシロクマのことは絶対に考えないでください。」

みなさん、どうですか?

家族のこと、仕事のこと、遊びのこと、いろんなことを考えようとしても、絶対に、シロクマのことが出てきてしまいませんか?

脳内には「オペレーター」と呼ばれる、「意識して注意を向ける機能」と、「モニター」と呼ばれる、「自分が考えていることに対して無意識に注意を向ける機能」があります。

とくに、無意識に働くモニターの方が影響力が強く、この「シロクマのことは考えないように!」と一生懸命に考えている自分の脳を認識し、そこに注意を戻す働きをしているのがモニターなのです。

たとえば、食品スーパーに行って、「あそこのお菓子売り場には食べてはいけないクッキーが並んでいるから、絶対に行ってはいけない!」と自分に言い聞かせます。

すると、頭の中ではもっと言葉が聞こえてきて、「クッキーだけはダメ!太るからダメ!」「あれ、でもなんでクッキーを食べたいんだっけ?そうそう、甘くて美味しいんだよなぁ〜。」「いやいや、ダメだってば!」「クッキーに気をつけろ!」「クッキーからは逃げないと!」「クッキーのある場所には行ってはいけない。どこにあるんだ、クッキー?」「クッキー、クッキー、クッキー!!」

と、気づくと、脳が自分をお菓子売り場に連れて行き、手にクッキーの箱をもたせているのです。

ダイエットも一緒ですよね。

絶対に食べてはいけないと自分に言い聞かせていたはずなのに、言い聞かせれば言い聞かせるほど食べたくなり、誘惑に負ける経験はありませんか?

ぼくは山ほどあります。

何かを避けなければいけない時に考えるべきこと

「これをしてはいけない」と考えると、絶対にそれをしたくなるようにできているので、考え方を変えなければいけません。

うつ病患者が、「悲しい思いをしたくない!」と強く念じる人の方が、「悲しい思いをしたい!」と強く念じる人よりも、ずっと悲しい思いをしてしまう、という実験結果も出ているくらいです。

よって、何かを避けたいのならば、「逆のことをしたい!」と意識することが一つの方法です。

そしてこれはぼくたちの脳の仕組みなので、受け入れるしかありません。

以下の方法が推奨されています。

  • 誘惑を感じたら、その誘惑を感じているという事実を受け止める。
  • 次に、「ああ、自分は今、誘惑を感じているなぁ」と自分で認識する。その時、無理に忘れようとしたり、他のことを意識しようとしない。
  • 誘惑を感じることは、自分でどうにもコントロールできないものであることを認める。ただし、それにどう反応するかは、自分の選択次第であることを思い出す。
  • 目の前の誘惑ではなく、自分が本当に達成したいと考えている長期的な目標を思い出す。そして、どちらを選択するか、自分で決断をする。

 

まとめ

このように、意志の力や誘惑に対する衝動など、人間の身体の仕組みを知れば、どれも理解できるものばかりです。

逆にそれらをどうやって手なずけるかについて、よく学べたと思います。

ストレスは大敵ですので、自分をほめてあげながら、意志の力を鍛え続け、少しずつ自分を変えていきたいですね。