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小田実『何でもみてやろう』の感想レビュー。【すごいバックパッカー】

あなたの思い出に残る旅行はどこでしたか?

日本国内には素晴らしい場所がたくさんありますし、海外旅行も刺激が多くて楽しいですよね。

旅行が大好きで、人生を通じていろんなところに行ってみたいという方が多いと思います。

新しい場所に旅をすると、新しい友達が出来たり、美しい風景を見られたり、美味しいものを食べられたりします。

中には驚くような発見があったり、ついついホロっと来るようなこともあったり。

自分の人生にドラマをもたらしてくれるのが旅行の良いところですよね。

 

小田実さんという方の「何でも見てやろう」という本は読んだことがありますか?

これは、著者が2年越しで世界22カ国を貧乏旅行した際の記録であり、その後のバックパッカー達の原点となったものです。

なんと、1961年に発刊された50年以上も遡る古い本ですが、内容は今でも新鮮で刺激的です。

ハードなバックパッカーのみならず、旅好きのみなさんにおすすめ出来る一冊です。

小田実『何でもみてやろう』の感想レビュー。【すごいバックパッカー】

すごいバックパッカーが、旅に出たきっかけ

著者は大阪生まれ大阪育ち、そして東京大学を卒業後にフルブライト奨学生としてハーバード大学に留学します。

とまぁ、それはスーパーエリートの格好良い留学のように聞こえるものの、1年間の留学の実態はイメージとは間逆のもの。

学校はボストンにあるにも関わらず、授業などそっちのけで、気に入ったニューヨークのスラム街で貧乏暮らしを重ねる日々。

決して貧乏暮らしそのものが目的であったわけではなく、たまたま居心地が良くて居ついてしまったんですね。

画一的でない、人間のリアルな暮らしを求めていった先が、たまたまそこであったのでしょう。

日本に帰国せず、世界旅行に出かける

卒業後もすぐに日本に帰国せず、世界旅行の旅に出かけます。

行く先々で現地の人と触れ合い、リアルな生活実態を体験して行く様子がとても新鮮に描かれており、読み進めるにつれ、どんどんと引き込まれます。

道中の生活実態は、中流階級のものではなく、どこに行っても底辺の生活

行く先々の国々で、最も貧しい暮らしをしていくのです。

稼ぎなど無い、ただの旅行者なので仕方ありません。

衝撃的だったのは、お金が無い余りにインドの路上で地元住民に混ざって一夜を明かしたくだり。

実際にインドに行ったことが有る方なら分かりますよね、経済学者ピケティも腰を抜かすほどの超格差社会のインドでいくらなんでもそれは有り得ない、と。。。

それでも、そのような旅の道中で、人々の温かさに触れ、多種多様な生き方を見ながら、著者は歩を進めていきます。

この本を読んだ感想

読み進める中で強く感じたのですが、著者が旅先で経験する感覚が、自分がこれまで旅先で経験して来たものにとても近しく感じられました。

たとえば、強く憧れていたはずのマンハッタンの摩天楼への感動など時と共に呆気なく薄れてしまいます。

代わりに、なぜアメリカはこれほどまでに豊かなはずなのに、一般的な人の食事は日本のそれに比べてえらく簡素なのかとか、なぜアメリカは郊外に行くほど画一的な暮らしをしていて多様性を感じることが少なくなるのかとか、そういったことが気になりだします。

そして、日本にいた時は西洋や欧米と一括りにして捉えていた国々が、実はそれぞれ、全く異なる性質を持っていることに気付いていくのです。

ようするに、旅をすることではじめて「常識の向こう側」に接することが出来、考えるきっかけが生まれるということ。

こういうのは、旅をしてみないと分からないことですね。

旅から得られる経験は、古今東西同じ

著者は1959年からの2年間を海外で過ごしており、それは彼にとって26歳から28歳までの時期。

同じような年齢で海外旅行をしていた自分が同じような経験や思いを得ているということは、「旅行によって得られる経験というのは、現在も過去もそれほど大差の無い、不変的なもの」と考えられます。

しかもこれほどテクノロジーの発達した時代であっても、リアルな経験は自分の足で歩いてこそ得られるというもの。

どんなにインターネットが発達しても、現地に足を運び、現地の人と交流することで得られる経験や感動に勝るものは無いということですね。

だからこそ、いつの時代であっても、旅行はぼくたちに素晴らしい体験や経験を与えてくれることが、よく分かります。

ぼくのアルゼンチン旅行での印象的な体験

ぼくがアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに行った時のこと。

とある大衆食堂で昼食をとっていました。

周りのお客さん達は食堂内のサッカー中継に釘付けで、応援するチームが点を失うと、これで人生は終わりとばかりにウギャーッ、と悲鳴を上げてからガックリと肩を落としています。

その中、隣の席で食事をしていたオバアサンがカタコトの英語で話しかけて来ました。

彼女 「ウェア アー ユー フロム?(あなたはどこから来たの?)」

自分 「ジャパン!(日本だよ!)」

彼女 「オー、ハポネス?(おー、日本人?)」

自分 「シー、ハポネス!(そう、日本人!)」

彼女 「アー ユー サムライ?(あなたはサムライ?)」

ふっ飛びそうになりました。

ぼくの聞き間違いかと思い、「ん!?もう一回言ってもらえますか?」と聞き返すと、やはり、同じことを聞いてきます。

彼女 「アー ユー サムライ?」

彼女 「アーーー ユーーー サー ムー ラー イー ?」

何度も何度も、そしてゆっくり丁寧に、聞いてきます。

これは困ったと思いつつ、自分はサムライではないことを伝えると、そのオバアサン、とても悲しそうな顔をします。

身振り手振りを使ってよくよく話しを聞いてみると、そのオバアサン、黒澤明監督の映画「七人の侍(1954年公開)」の大ファンとのこと。

弱い村人を守る為に命を掛けて戦ったサムライ達の心意気に感動したようで、それ以来、すっかり日本が好きになったとのこと。

そして、現代の日本人にも、そのサムライ魂が生きていることを確認したくて、人生で初めて会った日本人(ぼくのこと!)に興奮して話しかけたそう。

世界のクロサワのすごさと共に、海の向こうにはこんな風に日本人を見てくれている人がいるんだなぁ、と感じ入った出来事でした。

 

ブエノスアイレスでよく通った大衆食堂。向こうに見えるテレビでサッカー観戦をしていました。

 

 

世の中には知らないことがたくさんありますし、旅はぼくたちに素晴らしい体験と経験を与えてくれます。

さあ、カバンに着替えを詰めてどこかに旅行に行きたくなって来ました!

あなたはどこに行きますか?