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ポルトガル訪問記  子豚とワインとコーヒーと

昨年末にポルトガルを訪れた。ラテンならではの温暖な気候と陽気な国民性。豊かな歴史と多彩な食文化に触れることが出来、初めての訪問であったがとても気に入った。旅の楽しみの一つはご当地グルメであるが、ポルトガル料理は日本人の口に合うこと間違いない。グルメの方には是非、訪れて欲しい土地の一つだ。

 

ポルトガルの地図 – 南にリスボン、北にポルト(Google Mapから)

首都はリスボン、国の南側に位置する。政治経済の中心であるだけでなく、超一流の観光名所を持つ。観光客の目当ては主に、15世紀から17世紀にかけて大航海時代を謳歌した当時の遺品や建造物の数々だ。その外観もさることながら、内部に一歩足を踏み入れると目に飛び込んでくる幾多の装飾品のきらびやかさに目を奪われる。黄金に輝く内装から、当時、世界中から富が集まっていたであろうこの地の豊かさや、ヴァスコ・ダ・ガマといった勇敢な冒険者の旅路に思いを馳せる。

船出を見送ったべレンの塔(世界遺産)

 

ジェロニモス修道院(世界遺産)

 

大航海時代を記念した、発見のモニュメント

 

日本は1541年に「発見された」らしい

 

雨の合間に一瞬だけ姿を見せた夕陽

リスボンで数日を過ごした後に第二の都市ポルトへ北上したが、その交通手段は幸いにも車であった。車であることの何が良かったかというと、途中でMealhada (メアリャーダ)という土地に立ち寄ることが出来たからだ。メアリャーダは、車でリスボンから2時間強もしくはポルトから1時間強という中途半端な土地にある。冒頭の地図上で赤く印が有る場所が、メアリャーダだ。リスボンを離れるその日、降り続けた雨は止み、空は青く、暑かった。知人のポルトガル人に連れて行かれたその先で、人生で経験した中で一番の豚肉料理にありつけるとは想像すらしていなかった。

レイタオンのローストの様子

その料理はポルトガル語でLeitão(レイタオン)という。意味にして、乳飲み子豚のこと。まだ母親からの授乳に頼って育つ中、生後4週間から6週間という非常に短い期間しか生きていない時期に屠殺される。そして、内臓を処理された後、外から中からニンニク・粗塩・コショウ・豚脂が塗りつけられ、臀部から口先まで通した鉄棒を用いて適温のオーブンでじっくりとローストされる。お店によると、素材の見極めのみならず、調味料の合わせ具合や火の通り加減に相当の技術と経験とが必要とされる、とても繊細な料理だとか。

右奥がレイタオン。付け合せはサラダとポテトフライ。

そして待つこと暫く、注文した料理が出て来た。見た目は豚肉のローストそのまま。口に近づけるだけで香ばしい匂いが漂って来る。一口食べて、驚いた。皮が北京ダックのようにパリパリしている。それはまるで、丁寧に水飴を薄く塗って焼いたかのよう。そして噛み締めると、優しい味の肉汁がこれでもかと口中に広がる。最も驚いたのは、その肉質の柔らかさと肉汁の豊かさとのバランスにである。ステーキでも焼肉でも、どんなに良い霜降り肉であろうが赤身と脂部が層を成していることが見て取れるものだ。つまり極論を言えば、口の中で赤身を噛んでいる時と脂部を噛んでいる時とが分かれて感じられると言っても過言ではない。

ところがこの子豚君。あまりに幼いがゆえ、その身体は脂を蓄えることすら覚えることなく、本当に赤ちゃんのようにふんわり柔らかな、赤身とも脂部とも分別のつかない身体をしている。生まれてこの方、口にして来たのは母乳のみ。恐らくその短い一生で緊張したことすら無いであろう、そのとても柔らかな肉質には、純粋な肉汁だけが広がっている。程よく振られた黒コショウと粗塩とが味を一層引き立たせ、合わせるワインはよく冷えた赤のスパークリング。少し甘めの口当たりが、子豚の脂を爽やかに流してくれる。ああ、世の中にはこんなに美味いものが有るのか。マリアージュは時に感動すらもたらす。人生で二度と無いかもしれないこの機会を無駄にしてはいけない。運転手である同行者に断りを入れた上、思う存分に楽しんだ。

玄関先に有った子豚の置物

ここまで感激したのも久しぶりだ。だが、正直に言おう。帰り際に目に留まった子豚の置物に対し、腹の底から心の底から罪悪感を感じてしまったのだ。あの赤ちゃんのように柔らかな肉質の感触を思い出すたびに、「ゴメンネ、ゴメンネ」と言いたくなってしまうのだ。ベジタリアンの人が知ったら、気絶してしまうだろう。

前述の通り、メアリャーダに行くには車での移動が必要だ。しかし、グルメな肉好きの方には、ここへの訪問を力強くオススメしたい。そして、メアリャーダにはいくつも同じような料理を出すレストランが有るようだが、敢えて違う店を選ぶといったリスクは取らないで欲しい。自信を持って言える。この店がオススメだ。

店名:Pedro dos Leitões
Website:http://restaurante.pedrodosleitoes.com/

レストランの外観

子豚への罪悪感との葛藤を抱えながら、自分は第二の都市ポルトへ向かった。ポルトもまた、リスボンに負けず劣らず、超一流の観光都市である。ポルト歴史地区として世界遺産登録されている旧市街地には、400-500年前の建物が多く残り、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーといったビデオゲームの世界の中を歩いているような感覚を覚えた。

街の中心広場

 

奥に見えるのは聖グレゴリウス聖堂

 

ポルト大聖堂
斜面に沿って並ぶ建物  オレンジ色の瓦屋根が印象的
道幅が狭いのは、直射日光を防ぐ為の知恵
街中の教会
旧市街の夜景
CALEM(http://www.calem.pt/)の酒蔵

旧市街の対岸には、ポルト市民ご自慢のポルトワインの酒蔵の数々が軒を連ねる。ポルトワインとは、ワインにブランデーを加えて作られるお酒で、比較的強いアルコール度数と甘さが特徴だ。フランスのシャンパーニュ地方で作られるシャンパンのように、街を流れるドウロ川上流で作られるワインのみがポルトワインを名乗ることが出来る。種類はBranco(白色)、Ruby(真紅色)、Tawny(黄褐色)とあり、Brancoは食前酒、Tawnyは食後酒といったように異なる飲み方をする。ここでもマリアージュは応用出来て、Brancoをトニックとライムと一緒に飲んでも美味しいし、食後のデザートのパイナップルにTawnyを適量かけて食べても酸味とカラメルの甘い苦味が交じり合って美味しく頂ける。

 

Tawny(左)とBranco(右)の試飲
1本10ユーロ前後で買えるので、国外で買うより相当安い

そしてポルトガルにいる間ずっと、毎食後の楽しみとしていたのが、そう、コーヒーだ。ポルトガルには、食後に限らず休憩時にも嗜む文化が深く根付いており、コーヒー好きの自分にとっては何ともたまらなかった。ほとんどのポルトガル人が飲むコーヒーは、エスプレッソスタイルである。日本のコーヒーもアメリカのコーヒーも美味しいし大好きだ。しかし、ポルトガルで飲むコーヒーがまた格別であった。

 

コーヒー

 

コーヒー

 

そしてコーヒー

ポルトガル人にコーヒーの飲み方を教えてもらうと、彼ら彼女らはコーヒーのアロマを楽しんでおり、必ずしも舌で感じる味を求めているわけではないとのこと。挽きたて・淹れたてのエスプレッソをクッと喉を通して胃袋まで送り込み、そこから食道を通って喉から鼻腔一杯に広がり返って来るアロマを受け止める。よって、砂糖がコーヒーの味を殺すと捉えられているわけでもなく、多くの人が好き好きに使っている。またコーヒー豆についても、必ずしも高級品を使えば良い味が出せるというわけではなく、ブレンド方法であったり煎り方や挽き方、そして淹れ方が重要だそう。要するに、知識と技術が大事とのこと。

ポルトガルではこの他にも、タラやタコといった魚介を使った料理も有名で、日本人の味覚にとてもよく合う。歴史散策の合間に名物料理に舌鼓を打つ。そんな贅沢でゆったりとした旅行が目的の方にピッタリの旅先となること請け合いだ。